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ものづくりからの復活③(27年2月20日)

 いま生きている人がよくなっていくためには、現実の世界を見ながら変えていくしかない

 前回に続き、藤本隆宏氏の「ものづくりからの復活」に含まれる、論点のいくつかを紹介しよう。

④TPPをどうするか
 藤本氏は、農業にも「良い現場」をつくることが必要だという。
 またTPPについても、中立の立場から、つぎのように述べている。
・単純な農産物の関税による保護だけでは、よい農業が残れないことは、歴史から明らか
・農業に、不可逆性、不確実性、外部性が伴う限り、自由競争で農業現場がよくなるわけでもない
・良い農業現場をつくるには、そのための特別な意思と知識が必要で、保護や競争だけでは不十分
・「すでに生産されたもの」の自由化には、原則賛成する。関税などの保護はしない
・「生産に至るまで」の間に、国が農業を支援すべきであり、これは保護主義という定義から外す

 TPPは交渉事であるから、うまくいくとは限らない。だが、有力な考えである。
 私自身も、TPPは仕方ないと思う。ここまで来て何もしないわけにはいかないし、農業を守るためには、少しくらいの熱湯がなければ、日本中のカエルが茹ってしまう。

⑤高齢者の活用
 少子高齢化が進み、生産年齢人口の減少が問題となっている。これを解決するには、①就業者の生産性を向上させる、②高齢者の就業率を高める、の2つの方法がある。これを同時にやる。
 すなわち、「良い現場」で長年仕事をしてきた「ものづくり現場のベテラン」に、他の現場(企業や産業)でも、良い設計の流れづくりができるような指導を行ってもらう。
 ただ、いくら「良い現場」のベテランでも、自分がやる場合と教える技術とは、まったく異なる。大企業と中小企業とでは、改善の環境も違う。そこで藤本氏は、「ものづくりインストラクター養成スクール」の開設を提唱し、一部実施している。すでに藤本氏の講座では、100人規模の修了生が活躍しているという。全国100人ではあまりにも少ないが、これが地域に普及しネズミ算的に増殖していけば、ものすごい数になる。すでに、群馬、山形、滋賀などで、はじまっているという。

 シニア層が、週3日のパートタイムでも働く場が生まれれば、現場の改善による生産性向上と高齢者の就業率向上で、国民の所得向上に大きく貢献することになる。


 藤本氏は、「ものごとは、それを見る高さによって異なる」と言う。
 たとえば、「日本がこの先どう生きていくべきか」を考える場合、選ぶ「立ち位置」によって、各人各様の答えがある。
 30万メートル(宇宙ステーション)から見おろし、日本の立ち位置を地政学的に考える人。3万メートルから日本経済の将来をみる、3千メートルから地域経済、30~100メートルからその産業や企業の将来を考える人、1メートルから家族のことだけを考える人もいる。

 藤本氏は、この本は現場系の実証経営学者の立場から、高度3~10メートルからみたものだと述べている。すなわち町工場2階の社長室や地方工場の設計室、プラントの制御室などである。まさに、地に足の着いた視点である。

 もっと上から見ると、いまモジュラー型製品(スマホなど)の爆発的普及で日本を圧倒している中国工場も、ここ10年ほどの「世界市場ニーズのシンプル化傾向」、つまり一時的な経済現象のおかげであったのかもしれない。今後世界の人々の所得の上昇につれ、日本が得意としてきた「インテグラル型」の製品が回復する可能性もある。
 もっとも、それまで日本の工場の多くが持つかどうかである。

 さらに上空から見た日本の行く末は、また異なるであろう。それでも、いま実際生きている人が、よくなっていくためには、現実の世界を見ながら変えていくしかない。
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