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ものづくりからの復活(書評)①(27年2月18日)

 賃金や為替などの「ハンデ」が無くなれば、「良い現場」を持っている日本の製造業は強い

 久しぶりに藤本隆宏氏(ものづくり経営研究センター長)の著書を読んだ。今回は2012年に発刊された、「ものづくりからの復活」である。藤本氏は、製造業を中心とした経営理論家である。とくにものづくりを、大きく「インテグラル型(摺合せ型)」と「モジュラー型(組み合わせ型)」に分けたことで知られ、「インテグラル型」に強い日本の製造業を評価している。

 ただ藤本氏の著作は、400ページ以上の「大作」が多く、読むには一大決心がいる。「ものづくりからの復活」も490ページあり、とても一気に読むことはできなかった。内容も繰り返しが多い(年寄りにはありがたいが)。また本文中、比較優位論の説明などに、記号の入った計算式が出てくるのには閉口した。短期記憶が低下した身には、いちいち記号の意味を覚えるのが苦痛である。

 それでもさすが、製造業理論の「大家」である。著書のそこかしこに、私自身もこれまで現場で体感してきたことが、うまく体系的に理論づけられている(だからどうした、と思うところもあるが)。
 とくに藤本氏が、この本で強調していたことは、日本には「良い現場」を残さなければならない、ということであった。

 藤本氏のいう「良い現場」とは、≪高い生産性・品質・スピードによって、顧客へ向かう「良い設計の良い流れ」を生み出し、相対的に高い生産性・品質を達成する工場≫のことである。日本の多くの工場は、円高や賃金差と言うハンデをなくせば、中国拠点の2倍以上の物的生産性を有しているという。
 とくに日本企業は、「インテグラル型(摺合せ型)」の製品に強い。後述するように高度成長期に高い生産性を得ることができたことと、「気配り」のできる気質のひとが日本人に多いためであろう。

 たとえばトヨタである。あまりにも優良すぎ、たとえにならないかもしれない。だが、この本が書かれた時期(2011~12年)を考えてみよう。リーマンショック後の大幅な需要低迷、1ドル70円台の円高、3.11大震災やタイの大洪水での部品供給不足、そして米国のトヨタパッシング訴訟事件である。
 さしものトヨタも、この4~5重苦によって5000億円もの赤字を計上するなど、業績は大きく悪化していた。並みの会社なら、とても持たない。多くの経済評論家も、大きすぎるトヨタの問題点を指摘していた。その時期である。

 藤本氏は、その内外の悲観論の中でも、トヨタを信じていた。トヨタは、ずば抜けた「良い現場」をたくさん持っていたからである。そして大企業にはまれな、「すばやく修正する力」を持っている。藤本氏は、トヨタの艱難辛苦はトヨタが遅れているからではなく、先を進み過ぎているからだと見抜いていた。

 そして藤本氏の指摘した通り、トヨタはみごとに復活した。
 今月4日に発表した2015年3月期の連結業績予想では、営業利益が過去最高の2.7兆円にまで達する。もちろん円安の影響は大きい。それでも「ハンデ」さえ無くなれば、いかに日本の製造業が強いか、ということの証明である。

 じつは日本では、このような「良い現場」が減少している。長引く「ハンデ」に耐えきれず、「現場」そのものが消滅しているのである。
                                                      (続)
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