FC2ブログ
RSS

バリ取り作業(5月10日)

 これまで見落とされがちであった、バリ取りのような周辺加工の負担を軽減することが、ものづくりの基盤を強固にする

 日本の製造業は、衰退の中で生き残りをかけている。とくに、中小零細企業は、多品種でしかも3Kと呼ばれる、利益が薄くて劣悪な環境で作業を行っている。
 
 たとえば板金工場では、金属板をレーザーなどの設備で切り抜き、曲げ加工、溶接を行い製品にする。それらの加工では、必ずバリやスラグが発生する。そのため、加工の合間には人力での「バリ取り」、あるいは「磨き」を行っており、その工数がバカにならない。また鋳造工場も、鋳造機で行う作業はほんの一部であり、工数のほとんどは、切断、バリ取り、磨き、洗浄、修正などの泥臭い手作業である。
 これらの作業は、日本の若者に毛嫌いされ、高齢者あるいは外国人が研修という名目で行っていることが多い。

 そのうちの「バリ取り」作業では、2~3キロもある回転工具を保持し、防塵マスクや安全メガネを付け完全武装で作業する。部品の組み合わせや外観に影響する複雑な作業で、工具に巻き込まれたり破片が飛んで、けがをすることもある。
 そのうえ、削り取った粉塵が舞い、作業環境を損なう。「良心的な」工場では、強力な吸塵機で粉塵を排出しているが、完全に除くことはできない。吸塵機は、冷暖房効果を削いでしまう。

 とくに問題なのは、このように大変な思いをして「バリ取り」を行ったとしても、お客はそれを付加価値と認めてくれないことである。もちろん、製品にバリがついたままだと、すぐにクレームとなる。すなわち「バリ取り」作業というのは、マイナスの価値をゼロにすることしかできないのである。

                             イモムシ

 金属加工業の宿命と言われていた、このバリ取り作業を合理化して、現場の改革を行おうとしている企業がある。福井の板金加工業者のN社である。この会社は、大手メーカーの設備用の板金加工を行っているが、前述のようなバリ取り、磨き、修正など、工数のかかる作業に悩まされていた。

 そこで、最近開発された自動バリ取り装置に目を付けた。この機械は、加工された板金を、旋回・搖動するロータリーブラシにかけ、バリを取り除こうとするものである。もちろん吸塵効果も優れている。新潟の板金加工業者が開発した設備であり、基本的な性能は備えている。 
 ただ平面部に傷を付けずに、材質も形状も発生箇所も異なるバリだけを除去するものであるから、使用方法は簡単ではない。独自の工夫を重ねながら、ノウハウを積み重ねていくしかない。
 
 この事業が成功すれば、これまで大きな負担であった「バリ取り」作業工数を大幅に削減することができ、合わせ3Kと言われた職場の作業環境が劇的に改善される。会社のコアな部分に資源を集中させることができ、大幅に生産性が向上する。そうなれば、日本の若者も製造業に注目する。

 すなわち、日本のものづくり技術の向上は、3Dや精密加工など、核心部を向上させるだけでは不十分である。これまであたり前と思って見落とされがちであった、周辺加工の負担を軽減することも、同じくらい重要である。とくにバリ取りは、ほとんどの加工に発生する。

 中小の工場が、この泥臭くて付加価値が低いとみなされてきた作業から解放されれば、複雑多彩な造形や精密加工など、付加価値が高いとされる技術が向上する。日本のものづくりの、ほんとの良さを活かせるようになるはずである。
スポンサーサイト



トラックバック
トラックバック送信先 :