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なぜ日本の建設コストは高い(1月27日)

 悪条件の中で、建設コストを欧米並みに抑えようとするのは危険きわまりない

 昨年あたりから国土強靭化が叫ばれ、建設事業予算も増える見込みである。 
 日本の建設コストは、高いといわれる。欧米の2倍以上の価格である。1990年代、日本の公共事業費の対GDP比は、欧米の2倍であった。それでもまだ、欧米以下のインフラしか整備されていない。

 なぜ日本での建設コストは高いのか。一部、利権による癒着もある。それはどの業界でもある。それ以上に、わが国特有の厄介な問題がある

 つぎに示すように、わが国は、その位置、地形、地質、気候などの国土や自然条件から地震や台風、集中豪雨などの自然災害に対し、きわめて脆弱な国土となっている。
 
①国土は、弓のように長く、入り組んでいる。長さでは、欧州本土をカバーするくらいである。そのため、交通や送電、情報通信などのインフラ整備は長大となる。
②入り組んだ海岸線は、約35000kmあり、津波の被害を受けやすい。しかも、本土でさえ4つの島に分かれ、それぞれが海峡を隔てている。
③平野は国土の約3割と狭い上に、降った雨は中央の山脈から急勾配の河川を通って一気に流下する。
④山岳地帯が多く、平野が少ない。平野でも軟弱地盤の上にある。
⑤4つのプレートの上に乗っているため、世界有数の地震国であり、複雑な地質地盤は、ゆれに対して壊れやすく、地震による被害が拡大する可能性が高い。
⑥火山が多く噴火予知も困難である
⑦地盤沈下によるゼロメートル地帯が多く、洪水だけでなく、高潮の危険性も高い。
⑧台風の通過地帯であり、被害を受けやすい。     
⑨国土面積の60%が、積雪寒冷地帯である。
⑩さらに、近年の異常気象により、集中豪雨や降水量の変動幅が拡大している。

 日本に建設物をつくるためには、これだけのことをクリアしなければならない。どうしても、トンネルや橋梁、高架工事が増える。さらに、その耐久性も高度なものが求められる。ちなみに、欧米のほとんどの国では、地震や津波、軟弱地盤に対応する必要は、ほとんどない。また道路を、山岳地帯に走らせる必要もない。

 これらに加え、日本ではもっと大きな問題がある。土地の所有権が強く、また複雑に入り乱れている。東北の復興の遅れも、この私有権のせいである。中国並みまでは行き過ぎとしても、欧州並みの所有権制限になるだけで、建設投資額や建設期間は、半分以下になる。

 日本特有の悪条件の中で、公共工事が欧米並みに抑えられている。ということは、日本はそれだけ危険な状態に置かれていることになる。パッシングの中で、建設工事を行う技術者が激減している。さらに危機が拡大している。
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