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市場と権力(佐々木実著)(1月22日)

 日本の「詐欺師」は、その「悪事」ぶりにかけては、まだまだ欧米人の足元にも及ばない

 すべての人は詐欺師である。まず自分を偽り、つぎに他人をだます。そのテクニックの卓越した人が、世に出てくる。竹中平蔵氏は、その親玉格であろう。いや、単なる実働部隊長かもしれない。

 温厚そうな人柄、さわやかな弁舌、一見もっともな理論づけによって、多くの人はコロリと騙される。私も一時騙された。かって、本人すら必要と思わなかった郵政民営化を、このテクニックだけで進めてしまった。政争しか頭にない当時の小泉首相は、この才能を最大限利用したのである。

 「市場と権力」には、この竹中平蔵氏の虚実が、余すところなく炙り出されている。著者は、フリージャーナリストである佐々木実氏である。この本は、2013年の新潮ドキュメント賞に選定された。
 経済学者、国会議員、企業経営者の顔を使い分け、“外圧”を利用して郵政民営化など「改革」路線を推し進めた竹中平蔵氏は、いまも政権に入り込んでいる。いったい彼は何を目的としているのか。
 
 佐々木実氏は、その著書の一節「映画『インサイド・ジョブ』が伝える真実」のなかで、アメリカの金融業界の構図をつぎのように喝破している。

≪政界や学界が金融業界と癒着を深めながら金融業界の規制を取り払い、金融バブルを誘発して世界を危機に陥れ、ウォール街が窮地に陥ると今度はアメリカ政府を動かして莫大な公的資金で金融業界を救済する。≫

 すなわち政府と民間で、人が入れ替わり立ち代わり、利権あさりをしている。日本の天下り役人もびっくりである。

 じつは、この「回転ドア」構造は、アメリカだけではなかった。儲けることにかけては、日本の経済人も抜かりはない。あの構造改革路線を中心に、政府の審議会や決定機関に、民間の金融業者や学者が入り込み、蜜月構造を作り上げている。そこには、オリックスの宮内義彦氏など、多くの経済人の名前があがっている。

 もちろん竹中平蔵氏自身も、その中の一人である。超高級マンションを東京都内にいくつも所有するという。本人は、本がたくさん売れて、その印税で購入したと弁明しているが、それでは説明がつかない。氏が関連する大会社の取締報酬が超高額なのも、不自然である。

 それでも、竹中氏の蓄財は「たかが」数億?でしかない。アメリカの金融業者のそれに比べたら、一桁も二桁も少ない。日本人は、悪事にかけても、スケールが小さい。年季の入った欧米人の、まだまだ足元にも及ばないのである(この控えめなのが、日本人のいいところであるが)。
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