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「カウントダウン、メルトダウン」福島第一の事故(12月4日)

 あの事故の知見を活かさない手はない。日本以外の各国は、3.11を「他山の石」として、原発増設を進めている

 船橋洋一氏の著書である。3.11からの福島第一原発に関わる人々の動きを、きわめて幅広い立場から、記述したものである。上下巻合わせて、900頁にも及ぶ大作だ。
 インタビューした人は、記載されているだけで100人以上。実際には、数百人にもなる。
 東電の現場従事者だけでなく、その本社や関連会社、政府中枢、原子力保安院、安全委員会、経産省、防衛相、文科省、地域自治体や住民、さらには、在日米軍や各国大使館、アメリカ政府の内部にまで踏み込んでいる。
 その人間関係にまで及んだ、広く深い取材は、幅広い人脈を持ちジャーナリスト経験の長い船橋氏ならではのものであろう。

 とくに、アメリカ関係の記述は、特筆ものである。
 あのとき米海軍は、米国空母をいかなる形でも、汚染させることはできなかった。いったん汚染されれば、艦隊は世界へ自由に航海して、寄港できなくなる。そこで海軍は、横須賀基地で放射能が検出された段階で、原子力空母ジョージ・ワシントンが、緊急出航。また原子力空母ロナルド・レーガンも、寄港を取りやめ遠ざかっていった。
 空母が避難するということは、在日米軍、大使館員など、すべての米国人が、日本を去る、ということを意味する。
 ホワイトハウス高官は、「もしあの時、在日米軍が日本から撤退したら、日米同盟は終わっていただろう」と述べている。この危機意識を、ホワイトハウスと国務省の担当官、在日大使館は共有していた。そこで彼らは、米海軍の提案する200マイル(320㎞)避難案を、身体を張って阻止したのである。

 そして、あらゆる関係機関の人たちが、この原発危機に当面し、右往左往した。その様子が、赤裸々に描かれている。この期に及んで個人のメンツや縦割り組織を意識する人、できることはすべてやる覚悟で乗り込んできた人。様々である。
 いろんな組織がいろんなことを考えているため、重複したり、まったく間に合わなかったりすることもある。全体を見るべき首相たちが、子供のサッカーみたいに、一つのことだけを追いかけ回していたこともわかった。
 何はともあれ、何千、何万という人たちが、あの半月間、死に物狂いで頑張ったのである。

              必死の救命行為 H28.11.13

 しかし今更ながら、いかに「安全神話」に則って原発が作られ、維持されてきたかがわかる。「重大事故は絶対起こらない」という前提で、多くのものごとが決められてきた。
 後知恵ではあるが、事故後におこった一つひとつの不具合を見ていくと、簡単な準備さえあれば、起こらなかったことが多い。そのうちの、いくつかでも対策が施されていれば、あそこまで重大事故にはならなかった。
 たとえばハード面では、配電盤が集中していたこと、ベント機能、注水機能が不十分であったことが挙げられる。具体的には、それらを動かすための、弁やモーター、動力の冗長性が不足していたことである。その気になれば、低コストで対応できていたはずだ。
 ソフト面では、SPEEDEIと呼ばれる緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステムが、ほとんど避難の役に立たなかったこと。そもそも、20キロ以上の大規模避難は、まったく想定していなかったという。
 すなわち、原発反対者に気を使うあまり、やるべきことを隠してしまったのである。
 そのため、関係者は大変な思いをした。

 一方、その熾烈な事故処理の経験から、原発事故に対しての膨大なノウハウが蓄積されたことも、事実である。そして、それほどのコストをかけなくても、安全対策は十分できるということもわかってきた。
 この知見を後世に活かさない手はない。現に日本以外の各国(とくに中国、韓国)は、3.11を「反面教師」として、急ピッチで原発増設を進めている。

                水鳥
 ところで
 あの時期、日本中、いや世界中は、原発事故が最大の関心事であった。ただよく考えてみると、なぜあんなに大騒ぎしなければならなかったのか。
 ただ一つ、「放射能」である(専門家は『放射線』といえという)。
 ということは、「放射能」さえ過度に気にしなければ、あの騒ぎはいったいなんだったのかということになる。
 もしかしたら日本はいま、「水鳥の羽音」におびえているだけではないか。慎重すぎる原発の再稼働は、源・平の富士川の戦いで、驕る平家が潰走したときのように見える。

 日本が周辺諸国から蹂躙されないためには、国民が覇気を取り戻さなければならない。いくら高齢者が多くても、気位までが「老人国家」になったら、おしまいである。

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