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原発撤退戦に全力を注げ(4月14日)

 撤退は推進よりはるかに難しい。そのしんがりを務める優秀な人材の確保・育成が必須である

 
 福島第1原発の地下貯水槽から、つぎつぎ放射能汚染水が漏れ出している。マスコミは批判的に報道しているが、当事者こそ気が気でなく、焦っていることであろう。また先月は、ネズミの侵入で漏電、電源が遮断して冷却水が回らなくなった事故もあった。どちらにしても、初歩的なミスが連続しているように見える。このようなことが続けば、そのうち取り返しのつかない事故が発生するに違いない。(もっとも、これらの不都合が表に出てくることは、悪いことではない。)

 では、なぜこのようなミスが続くのであろうか。
 現場に優秀な技術者が、ほとんどいなくなってしまったからである。これまで原子力発電所に限らず、モノづくりの現場では、経験豊かで高い思考能力を持った技術・技能者が、高度なモノづくりを担ってきた。彼らは、「現場の考える人」と言われ、とくに大きな力を発揮するのは、新製品の開発や、これまでない異常が発生したときであった。彼らは、長年の経験とすべての知見、人脈、創造力を駆使して問題解決にあたる。異常は小さいうちに発見・修復され、表に出ない場合が多い。もとよりこれらは、マニュアルにはない。

 近年、デジタル家電のような、部品を組み立てるだけでできる「組み合わせ型」の商品が増え、さらに現場でもデジタル化が進み、彼らの居場所はどんどん減少している。だが、日本が得意とする「摺り合せ型」と呼ばれる金型や自動車製造などの分野では、まだまだなくてならない存在である。そして、巨大複雑技術である原子力発電所こそ、日本が得意とする「摺り合せ型」の典型なのだ。だからこそ、3.11であのような過酷事故が起こったとき、直接には一人の死者も出なかったのである。

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 しかし、電源コンセントの不整合やネズミ漏電、汚染水漏れなど、初歩的ともいえるようなミスが、しばしば発生している。これは、現場技術者の士気及び技術レベルの低下としか思えない。とくに、現場における士気の低下が大きいのではないか。意欲さえあれば、技術はついてくる。

 したがって今後、原発にはこれまで以上に、意欲を持った優秀な技術者がいなければならない。原発を、本腰を入れて廃止するなら、この撤退戦には最大限の資源を注入する必要があるからである。撤退のための活動は、推進するよりも、はるかに重要で難しい。安全に効率よく撤退するためには、人もお金も資源も、これまで以上につぎ込まなければならない。
 そしてこれには、100年かかる。

 このしんがりを務める人こそ、きわめて重要である。技術以外にも国の最高レベルの頭脳が求められる(秀吉が最も認められたのは「金ヶ崎の戦い」でのしんがりの功であった)。福島第一の事故処理だけでなく、これまで蓄えてきた核燃料廃棄物の処理、プルトニウムの扱い、日本を取り巻く原発推進国との軋轢、残り少ない天然ウランの活用、廃炉技術の確立など、課題は山積みである(こんな難しいことが、「反原発」の雰囲気の中で、できるはずがない)。
 また例えば、今は邪魔者扱いされている使用済み燃料などの廃棄物は、視点を変えれば熱源であり放射線源である。うまく使えば、100年後からの新しいエネルギー源として、この上なく有用になる。

 よって今さら、グリーンエネルギーだ、天然ガスの開発だ、スマートグリッドや蓄電池の開発だなどと、言っている場合ではない。下手な政策を打って、貴重な理工系の人材をそのようなところに回すべきではない。

 最優先にしなければならないのは、原発の安全な撤退である。その重要性を国民と共有し、原子力関係に優秀な人材を確保し、焼け太りと言われようと、今の何倍も育成しなければならない。場合によっては、あと20~30基原発を新設し、モチベーションと技術力を維持・拡大し続けるのである。そうしないと、いまの利権まみれで無能な集団に乗っ取られたままの原発・核は暴走し、手が付けられなくなる。 

 しかし、あまりにも国民の原発・放射能パニックは大きい。今のままでは優秀な人材は、最重要である原発撤退分野に、誰も来ない。それでは、安全な撤退ができない。グリーンエネルギー推進戦略は、原発の撤退戦を軽視するという、極めて危険なシナリオを選択することになるのである。
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