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建設業者が設備販売業者へ事業転換(9月9日)

 会社独自の特色をうまく活かしたみごとな戦略であるが、企業の内情やそれを取り巻く環境はさまざまであり、そのまま真似はできない

 7日(土)の診断士更新研修会に参加した。毎年この研修会では、直接実務に係っている零細事業者の講演が聞ける。今回も期待通りであった。とくに、「建設土木業によるIT活用新事業」と題した、(株)東協の経営革新事例が面白かった。講演は、30代の若手後継者が行った。演題を見ると、IT活用が中心のように思えるが、決してそうではない。

 この会社は、建設事業のなかで、コンクリートの圧送・施工(打設)を行っている、従業員10名足らずの小規模事業所である。数台のコンクリートポンプ車を保有していたが、ご多分に漏れず5~6年前までは、公共事業の減少に悩まされていた。その上、燃料や部品代が高騰して経営を圧迫し、今回講演した後継者が入社したときには、事業の存続すら危ぶまれていたという。
 もちろん会社も、事業転換は必要だと考えていたはずである。しかし、何をしていいかわからない。これは、ほとんどの企業に言える。入社前までは、畑違いのファッションの世界にいて、自社の技術や事業の内容さえよくわからない後継者も、悩んだであろう。

 そこで彼は、いくつもの経営革新に関するセミナーを受け、SWOT分析など新事業の戦略立案の手法を学ぶ。普通はそこで足踏みしてしまうのだが、この段階で試行錯誤したアイデアが、効いてくる。すなわち、自社と業界の特徴をうまくつかんで、それを活かそうとしたのである。
 具体的には、これまで自社で扱っていたコンクリートポンプ車に着目した。仕事として、日常的にこの設備を使っていたわけであるから、設備に対しての不満、ユーザーニーズはわかりすぎるほどわかっている。故障した時の修理も自社で行ってきた。そして、設備の価格や値決め、販売ルートについても知っている。ある面では、メーカー以上にこの設備を熟知しているとさえ言える。小さい業界であるから、顔なじみの同業者も多い。
 そこで当社は、このコンクリートポンプ車の修理および中古車販売を、新事業としたのである。この会社独自の強みと特色を洗い出し、うまく活かしたみごとな戦略というしかない。

 もちろん、そこから先がもっと大変であったろう。その構想を社長や従業員に納得させ、一歩を踏み出すのは簡単でない。苦しい会社の資源を使って、採算が合うようになるまで我慢するのは、それ以上に大変だ。ホームページを開設しただけで、受注が来るわけではない(実際は、1年目に偶然1件だけ受注があったという)。直接顧客のところへ飛び込んでの、顔と顔との営業、仕入れやその際の資金繰り、部品の調達や修理、設備のノウハウに関する技術習得、初期クレームの対応など、いろんな問題があったことは、想像に難くない。
 それでも、この新事業を始めて5年目の今年は、20台前後の販売を見込めるまでになった。さらには相乗効果によって、本業も順調になったという。典型的な経営革新の成功事例である(経営革新を進める企業は、それまでできていなかった情報収集・営業活動を行うようになるため、本業業績もよくなることが多い)。

 それぞれの企業の内情やそれを取り巻く環境など、おかれた状況はさまざまである。戦略も道筋も一様ではない。したがって、表面だけ真似しても何もできない。あらゆる独自の発想、工夫が必要なのである。
 そして、事業の進捗状況に応じて、さまざまな工夫のうちから、必要なものを選択し、組み合わせ、さらに新たな創意工夫をこらしていく。そこにはまた、新たな問題が立ちふさがる。その茨をかいくぐらなければ、決して次のステップには進めないのだ。

 講演者は、この事業の成功を活かして、次の展開を考えている。古巣である衣料品業界である。中古のコンクリートポンプ車販売だけでは、市場が限定されているためであろう。男性ばかりの職場からも、すこし距離を置きたいのかもしれない。
 次の事業といっても、建設機械とは異業種であるため、また違った次元の問題が、無数に発生するはずである。それについても粘り強く対応し、福井発の新しいビジネスモデルを作り上げていただきたい。
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