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AIによる「仕事の未来」 (書評)

 世の中は千差万別。万事は塞翁が馬で、人類が生きている限り結論は出ない

 小林雅一氏(先端技術動向調査専門)の著書「仕事の未来」には、GAFAと呼ばれる巨大企業のAI開発における、具体的な現場の様子が書かれている。
 例えばいま、おもなAIの特徴は、機械学習によって訓練されるところにある。この学習の90%は、「教師あり学習」と呼ばれ、人間が膨大な教育データを入力するものである。たとえば、内視鏡やCIの画像から、一つ一つ異常個所にマークをつけ症状を判断し、それを入力していく。その膨大な積み重ねが、AIによる癌の画像診断となる。

 したがって、ひとつのAIシステムをつくるのには、気の遠くなるような単調作業を必要とする。プログラマーが、「IT土方」と呼ばれる所以である。そして、教師である人間様の入力データがいい加減だと、それ以上の診断はできない。


 AIの得意技の一つが、このようなパターン認識である。
 これはゴミの選別など、長時間の繰り返し作業には威力を発揮する。
 ただ豆腐のように、柔らかく壊れやすいものをつかむのは難しい。同じ形でも異なる事象間の関連性を見出すこと、因果関係や内部のカラクリを見抜く洞察力、さまざまな組み合わせによる柔軟性、変化に応じた理解など、まだまだ未熟である。たとえば、敏感な問題である黒人や性差別対応、サービス業における微妙な心遣いのオモテナシがAIにできるとは思えない(並みの人間よりはましであろうが)。

 また自動運転車の開発は、まだ道半ばである。世の中には想定不能なことが山ほどある。たとえば、運転道路脇にたたずむ人がつぎになにをするか、挙動を予測するのは難しい。耄碌した老人の運転よりは安全であるが、世の中には合理的でない人がたくさんおり、すんなりと認めることはないであろう。

               学問の勧め 松平春嶽

 とくにこの本で興味を持ったのは、GAFAの人材開発である。ITからAIを駆使して、どのように従業員の能力を引き上げているのかについて言及している。
 なかで、グーグルとアマゾンにおける、対照的な社内風土について取り上げている。

 グーグルは得意のパターン認識技術を駆使して、社内の生産性の高さとの因果関係を探る試みを行った。その結果、何をしても組織に認められる「心理的安全性」が醸成されたチームほど生産性が高い、と結論付けている。
 つまりグーグルは、「心理的安全性」を、組織が機能するためのカギと位置づけ、それを担保することで、従業員の創造性や生産性を高めようとしている。

 それに対しアマゾンは、熾烈な競争文化を育むことで、従業員同士に互いのアイデアを激しく批判させ、消費者の求める商品・サービスを生み出そうとしている。現場労働者に対しても、ITを駆使して細部まで指示を行い、評価も機械的である。当然退職者は増えるが、アマゾンで鍛えられているので、他企業からは引く手あまただという。

 個人的には、前者の方が好ましい。だが世の中は千差万別である。万事は塞翁が馬で、人類が生きている限り結論は出ない。

                信じる者は救われる 

 AIやIOTに関しては、大御所である坂村健氏(東大大学院教授)など多くの本がある。
 最近読んだのは、東大の若き准教だった(差別発言?で解雇)大澤昇平氏の、「AI救国論」(新潮新書)である。AIやITに関する日本の実業界の問題をよく捉えており、解決策も提案している。たとえば、言語にハンディを負う日本産業が再生するには、言語に依存しないAIシステムを、独自に開発するしかないという。
 彼自身も、ネトウヨと言われ大学を追い出されるなど、出る杭を叩く勢力と戦っている。

 ただ、氏の初めての著作ということで、後半は難解すぎて具体策がよくわからなかった。至るところに専門用語が並べてある。「深層化に当たっては、正規化線形ユニット(ReLU)という活性化関数がシグモイド関数にとって代わっていることや、ドロップアウトのように、ニュートラルネットワークの一部のニューロンをあえて破壊することによって強化云々」とあっても、ちんぷんかんぷんである。
 これでイメージがつかめるのだから、日本語は素晴らしい。
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