不要不急

　いくらお金があっても、「不要不急」をなくせば豊かな暮らしはできない

　先週の連休中日（9月21日）、絶好の秋晴れなので、海岸散策しようと越前海岸に出かけた。三国サンセットビーチから1キロほど北のキャンプ場近くに駐車し、東尋坊までの遊歩道約1キロを往復した。

　かなりの混雑であった。三国サンセットビーチの大きな駐車場は、ほぼ満車。砂浜では大勢が、水遊びを楽しんでいた。ふだんはほとんど人影のない、東尋坊周辺の遊歩道も、頻繁に観光客とすれ違う。もちろん東尋坊の岩場は、見たこともない混雑の押し合いである。

　ニュースを見る限り、各地の観光地も大混雑であった。「不要不急」の外出自粛が解禁されたおかげである。
　これだけ過密でいいなら、自由度は相当上がる。

　　　　　　　　　　　　　　　　

　ところで、「不要不急」とは何か。
　まず観光旅行は、不要不急の最たるものである。だからGOTOトラベルを推進するより、観光業者にお金を配ったほうがいいという人がいる。

　また人が最低限生きていくには、いまわれわれが享受している「衣食住」のうち、ほんの一部あればいい。「衣」では、夏冬のシャツや上着と下着、ズボンが2～3枚。「食」では1日2000カロリー。麦飯と味噌汁、めざしで充分。「住」も、月5000円の貸家で、充分文化的な生活が送れる。

　無理にお金を遣わなくても、街には図書館もあれば、安価な温泉施設もある。これなら1か月2万円あれば、それなり贅沢に暮らせる。
　すなわち、世の中の90％以上のモノや活動は、不要不急ということになる。

　　　　　　　　　　　　　　　　　

　この90％の「不要不急」を自粛したらどうなる。
　観光を自粛すれば、観光業全員が失業する。この業界のすそ野は大きい。新築の住宅建設を我慢したら、建築業界は成り立たない。「衣」を自粛したら、繊維業界、デパート、アパレル専門店が全部潰れる。農民と消費者を直接結べば、不要不急の飲食店は無くなる。

　これで、経済活動が90％以上ストップする。
　いくらお金を配っても、観光事業者のスキルがどんどん落ちる。人々は楽しい観光が、金輪際できなくなる。また建築業者の腕が落ちたら、2度とまともな家は作れない。

　それどころか、これまでわれわれが営々と積み上げてきた豊かな暮らしが、根底から崩れてしまう。いくらお金があっても、それを遣うところがなければ意味がないし、その先の人生は真っ暗である。
　それくらいなら、地獄で閻魔様と遊んでいた方が面白い。
　現代社会は、ほとんどが不要不急で成り立っているのである。