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企業規模と生産性②

 中堅以上のメリットを小規模の企業が取り入れることは難しいが、逆は可能である

 前回取り上げたように、デービットアトキンソン氏は、「中小企業の生産性向上のためには、規模の拡大が必要である」と主張している。規模さえ拡大すればおのずと生産性は向上し、高賃金を払えるためさらに会社は大きくなるという。

 ただ、ものごとはそれほど簡単ではない。
 業種・業態、あるいは個別の事情によって、状況は大きく異なる。単に事業規模が大きければ、すんなり生産性が上がるとは限らない。かって私自身が在籍していた眼鏡業界においても、中堅規模の眼鏡枠事業者に比べ、スピンアウトした5~6人規模の方が生産性が高いことがあった。

 以下に示す小規模企業のメリットを享受したからである。
 小規模のメリット
①意思決定が容易
②分業ロスが少ない(多能工による業務ムラ削減)
③社内のコミュニケーションロスが少ない
④倒産しても影響が少ない(起業が容易)

 すなわち限られた期間、高付加価値分野に資源を集中するには、小さい企業のほうが適していることが多い。それにいくら大きな企業でも、無能な経営者に当たったら、かえってひどいことになる。

                親子狸

 それでも、小規模企業の限界はある。
 10人以下の会社が、以下に示したような中規模以上のメリットを、持続的に享受することは難しい。私が会社経営を続けられなかった大きな要因でもある。

 中堅規模以上のメリット
①限られた優秀な経営者を登用できる
②イノベーションができる
③輸出、税務、労務、法務、地域対応などの事務手続きの負荷に耐えられる
④多様な人材がいて、分業や応援体制を取りやすい
⑤企業間の取引頻度が少なくなる(営業や伝票、支払いなどの業務負担)
⑥美人社員が存在する確率が高く、それを目当てに「優秀な」人材が集まる

 これらに加え、先に示した小規模企業のメリットを、中規模以上の企業が取り入れることは十分可能である。限られた優秀な経営者なら、なおさらである。

               眼鏡枠

 具体的に鯖江の眼鏡業界が衰退したのも、小さい事業者が集まりすぎたからだという見方がある
 鯖江とイタリアの眼鏡産地ベッルーノの比較で、1992年は眼鏡出荷額(1200億円)と事業所数とも、ほぼ同じであった。その後いずれの産地も事業所数は減少していく。
 だが鯖江では出荷額も減少していくのに対し、逆にベッルーは出荷額が激増していった。1社あたりの規模が拡大したのである。2005年には鯖江とベッルーノの産地出荷額は、それぞれ700億円と2400億円にまで開く。一人あたりの出荷額(生産性)は、鯖江はこの15年同じであるが、ベッルーノでは1.3倍にまで向上している。現在はもっとその差が拡大している。イタリア(中国)では、ルクソティカをはじめ数千人規模の企業が成長している。

 これをみても、規模が大きい企業ほど有利な傾向がある。つまり、大きな企業の多い社会の生産性は向上していく。そうなると、日本でいちばん社長の多い福井、とくに鯖江の眼鏡業界はどうすればいいのか。
 正攻法なら、再編による規模拡大である。
 社長を辞めたくない、他に従属するのは嫌だというのなら、個別のゲリラ戦法しかない。自らに鞭打って、死ぬまで走り続けるのである。それも経営人生であり、個人的にはそのほうが魅力である。
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