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高齢者の起業(8月5日)

 高齢者は、自分たち自身のニーズを形にさえできれば、そのマーケットは膨大である


 国と地方の膨大な財政赤字、絶望的な少子高齢化の進展など、我が国の将来に対して、悲観的な見方が漂っている。いかにアベノミクスでも如何ともしがたい。これを少しでも解消するために、積極的な高齢者の活用が求められている。
 さらにもっと進んで、ここでは、多くの高齢者が起業することを提案したい。

 なぜ、いま高齢者の起業が求められるのか。その理由をいくつか挙げてみよう。

①高齢者自身の自立、生きがい
 年金制度の先細りによって、これから高齢になる人の生活が、確保できなくなっている。年金が少ないのなら、自ら稼がなければならない。誰も恵んではくれないのだ。また働くことによって、老化を遅らすことができ、「ピン・ピン・コロリ」の路線に乗っかる。
 さらに、何もしない高齢者が増えると、世の中が鬱陶しくなる。とくに男性の高齢者は、家では使い物にならない。いくら粗大ごみでも、何か生きがいが欲しい。

②膨大な経験や知識の蓄積を活かす
 長く生きているということは、それまでに仕事や人生で得てきた膨大な経験や知識の蓄積があるはずである。それを活かさない手はない。家にいた人でも、手料理の1つや2つはできる。
 もちろん若い人みたいに、新しい技術を覚えることはできない。膨大な蓄積の、ほんの1つでも発揮できればいいのである。それに、企業経営のなかでは、いろんな出来事が発生する。そんな時、高齢者ばかりの会社だと、必ず経験に基づいた、素晴らしい知恵が出てくるものである。


 ここまでは、これまでも普通に言われてきた理由である。しかし、高齢者の起業する理由は、これだけではない。もっともっと大きなメリット、いや、どうしても高齢者が起業しなければならない理由がある。

③財政破たんの回避
 高齢者年金制度がひっ迫する中で、今のままでは、国の財政が破綻するかもしれない。そうなると国債が買われなくなり、公的サービスができなくなる。これは、経常収支(外国とのお金の出入り)がマイナスになったときが危ない。
 そこで、わが国が財政破綻を免れるためには、この経常収支をプラスに維持することが、絶対に必要である(そうすれば、国の借金は国民の財産そのものである)。経常収支をプラスに、つまり外国へ支払うお金を少なくするためには、できるだけ国内で製品やサービスを賄わなければならない。
 もともと日本という国は、国民がすべて一生懸命働くことを前提として成り立っている。ところが、ぶら下がりが増えると、これができなくなる。働かない高齢者は、ぶら下がりのチャンピオンである。 したがって、チャンピオンの高齢者が働くようになれば、国が財再破綻する心配は、まったく無くなる。高齢の起業者は、(類は友を呼んで)高齢者を多く雇用するのだ。

④高齢者ニーズの堀り起こし
 高齢者が、新しい事業を起こすことは、他にも大きな意義がある。それは、高齢者の新しいニーズを掘り起こし、国内消費が拡大する可能性が大きくなることである。
 これまでの消費行動は、おもに働く中年世代までが担ってきた。ところが、最大のお金持ちである高齢世代の消費が冷え込んでいる。その原因のひとつは、供給側が完全に代替わりしてしまったからである。ふつう企業経営者は、自分と同じような年代の顧客を対象とする。そのほうが、よくニーズが掴めるからだ。経営者が若いと、高齢者をターゲットとした商品を開発しても、ピント外れになってしまう。あげく、オレオレ詐欺のようなものが、生まれる。
 一方、高齢起業者は、同じ高齢年代をターゲットとした事業を始めやすい。この起業した時の理念が大切なのである。同じ年代であるから、顧客の気心も知れている。その事業で、魅力ある商品・サービスを開発・提供すれば、これまで財布の紐が固かった高齢者も、喜んで消費するに違いない。
 もちろん、起業した高齢者も投資や消費を増やすから、合わせて内需が拡大し、足腰の強い経済が生まれる。日本のGDPは増大する。

⑤老人力を活かす
 昔、「老人力」が流行語になった。「老人力」とは、「物を忘れる、体力が弱まる、足どりがおぼつかない、視力や聴力が弱い、よだれを垂らす、同じことをくり返す、等々」のことを言う。
 確かにこれらは、普通の仕事では敬遠される。しかし、高齢者が起業する会社は、従来の会社と同じように考えてはいけない。「老人力」を活かす仕事を行うのである。それが、顧客である高齢者のニーズにマッチングする。
 たとえば、物を忘れると言うことは、口論した嫌なお客のこともすぐに忘れる。相手も高齢なら同じで、すぐに仕切り直しができる。人生経験を積んだ高齢者にしかできない離れ業である。
 また、体力が弱いのなら、高齢の農業従事者に対し、あまり体力を使わないような農作業補助具を、提案できるかもしれない。自分が困らなければ、そのようなものは考案できない。さらに、この器具が普及すれば、あらゆる業界で、高齢の作業従事者が増えるはずだ。
 すなわち④でも述べたように、高齢者が起業する会社は、自分たちのニーズを形にさえできれば、そのマーケットは膨大にある。一所懸命に、若い女性のニーズを手探りする必要は、無いのである。

⑥若年経営者へのスムースな事業継承
 多くの企業では、若くして創業した経営者が、60過ぎても居座っている場合が多い。社長を辞めると、やることが無くなり、片町でモテなくなるからである。そのため、30~40代の後継者が、埋もれてしまっている。
 そもそも、今の社長が若いとき始めた会社の製品・サービスは、そのときの同じ年代の若い顧客層を狙ったものである。したがって、社長が高齢になると、会社の業務と経営とのずれが出てくる。若手に経営を引き継げば、そのズレが解消され、会社の状態も良くなる。
 その場合、高齢社長はどうするか。
 経営を息子に譲ったあと、新しい会社を興すのである。新しい会社で、自分の年代に見合う顧客をターゲットにした事業を始める。経営経験があるだけに、再び成功の可能性は大きい。自分が新しい事業に移ることがなければ、何かと前の会社に口を出し、息子を腐らせてしまう。

⑦働きたい高齢者の受け皿になる
 多くの企業は、働きが悪くて賃金の高い高齢者はできるだけ雇いたくない。年功賃金傾向の高い日本の企業は、どうしても高齢者に手厚くなるからだ。それに高齢者は、ITなど、若い社員のテクニックにもついていけない。若い社風にも合わない。スキルのある高齢者は、若くて生意気な上司のもとでは働きたくない。したがって巷には、まだ働ける高齢者があぶれる。海外へ流出すれば、日本の競争力が削がれてしまう。
 それなら、経営管理能力や特別な技術がある人は、起業すればいい。さらに③の末尾で記載したように、高齢の起業者は、(類は友を呼んで)高齢者を多く雇用するから、巷にあぶれた高齢者の、大きな受け皿にもなる。

⑧失敗しても社会不安になりにくい
 高齢者に対して、金融機関は融資しにくい。いつポックリいくか、分からないからである。したがって高齢者は、身の丈にあった経営しかできない。あり余るお金を持っている人は、存分に投資すればいいし、無い人はそこそこでいい。いろんなやり方がある。とくに今の高齢者は、死ぬときに平均3000万円もの金融資産を残すそうである。その何分の一でも投資に回れば、すごいことになる。
 もし失敗しても、他にビジネスチャンスは無数にある。また、高齢者の会社が増えれば、再就職は容易である。中年の時に失業するより、ダメージははるかに少ない。それに、先は短いから何とかなる。

⑨高齢者の最大の強み
 そして高齢者の最大の強みは、もうすでに充分生きてきた、ということである。明らかに、若い人より命は軽い。死んでも悲しむ人がいない。これは大きい。誰も死にたくはないが、「もう死んでもいい」と思うことほど、強力なものはない。
 日本では、おかしな人道的見地のため、表向き高齢者と言えども大切に扱われてきた。しかし、高齢者自身が作った経営理念によって、命をもっと重要なこと(若い命を残す)に使えれば、こんな幸せなことはない。そろそろ、1度しかない「最後」を、名誉で飾りたいと思う人も多いはずだ。そう考えれば、仕事はいくらでもある。
 具体的には、兵役、防疫、災害援助、遭難救助、地雷除去、薬の治験、高所作業、深海作業、原発作業、宇宙作業などである。とくに「兵役」は、狙い目である。国連軍や外国の傭兵となって、外貨を稼ぐこともいい。高齢者が従軍すれば、「慰安所」は不要になる。


 このように、高齢者が起業することによって、まず高齢者自身が、生計を確保することができ、活力と生きがい、豊かな生活を得られるようになる。つぎに、高齢者の投資と消費によって、新たな内需が生まれる。そしてこれらが、日本経済の足腰を強くし、我が国が将来にわたって繁栄するための、重要な基盤固めになるのである。
 すなわち高齢者の起業は、高齢者本人だけでなく、我が国にとって大きなメリットとなる。いまのところ、デメリットは考えつかない。むしろこのような起爆剤がなければ、我が国の将来は、悲惨なものになることは間違いない。あとは高齢者自身が、起業の意志を固めるとともに、起業にあたっての阻害要因(別掲)を取り除いていくだけである。

 そこで、この高齢者の起業を支援するしくみを、提案しようとしている組織がある。福井県中小企業診断士協会である。すでに、竹川委員長を筆頭に、7名のワークチームが結成された。今年度中には、何か提案できるそうだ。
 もちろん、その支援するしくみを考えている人も、高齢者である。
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