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まんぷくラーメンの開発

 ラーメン以外の製品やそこまで行かなかった死体が海底に積み重なっている

 NHK朝ドラ「まんぷく」の後半は、インスタントラーメンの開発である。
 まず長谷川博己氏演じる立花萬平が、インスタントラーメンを思いつき、試行錯誤を加えて製品化に成功、デザインや販促方法を考えて商品化し、その後事業化に成功。一大産業として確立するまでを描いている。

 その立花萬平が、インスタントラーメンの事業を成功させるまでの苦労はすべて、製品開発が直面する障壁、溝である。そのことを、「魔の川」、「死の谷」、「ダーィウンの海」と呼ぶこともある。TVでは、その各段階における苦労や紆余曲折を描くことで、ドラマチックな仕立てになっている。
 それぞれの段階における障壁について説明しよう。 

【魔の川】
 この溝は、研究ステージと開発ステージの間に位置する。
 研究ステージから、新たな技術シーズを見つけ、ターゲット製品を絞りこむことである。この段階で、柔軟な発想で「戦略」を立て、どのような製品を作っていくのかが問題である。

 ドラマでは、立花萬平がインスタントラーメン「のようなもの」を作ろうと決心するまでの葛藤と、その後の開発段階での試行錯誤の連続をみごとに描き出している。満足いく製品ができるまでには、無数の失敗と、立ち止まって学習する数多くの局面があった。その踊り場を乗り越えて、ようやく自分たちが満足できるラーメンが完成する。

              三途の川

【死の谷】
 この溝は、開発ステージと事業化ステージの間に位置する。
 開発ステージでできた製品を、つぎの事業化ステージで、商品として完成させ、販売できるようにしていく。企業内部で「人・モノ・金」を調整して効率よく価値を生み出し、どのように顧客に販売するかの「戦術」が必要である。

 自分では完成したと思っていたインスタントラーメンも、そのままではなかなか売れない。売り方・アピール方法を工夫したり、TVのスポット広告を打ったりしていた。
 ドラマでは、1週間くらいで爆発的に売れるようになったが、現実はそんな簡単ではない。すぐ売れるようになったのは、現在と異なりあまり競合品がないことや、人々が新しい商品に飢えていたからであろう。いまはそんな簡単には売れない。ふつうは、ここで挫折する。

【ダーウィンの海】
 この溝は、事業化ステージと産業化ステージの間に位置する。
 事業化ステージでは、事業を行う経営体制が必要になる。つぎの産業化ステージでは、新市場の開拓や市場での優位性を保つことで競争に勝ち抜くことが必要である。この『ダーウィンの海』には、うようよ魑魅魍魎がさまよっており、新規性や珍しさだけでは越えられない。

 ドラマでは、あっという間に競合製品が現れ不良品が出回って、イメージの低下と、売上ダウンに見舞われた。特許だけでは類似品の出現は避けられないし、いったん人々に認知されれば、世の中には無数のアイデアが生まれる。その中で、つぎつぎと自社商品のレベルアップをはかっていかねばならない。味のバリエーションや包装方法、食べ方の変化である。
 最後に、ラーメン業界として同業者をまとめ、インスタントラーメンを一大産業にまで育て上げている。その紆余曲折が人間ドラマである。


 一つの商品が事業化され、産業として世の中の一部を占めるようになることはきわめてまれである。インスタントラーメン以外の製品、製品にもなれなかった技術の屍が、世界中の海底に、累々と積み重なっているのである。
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