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幼馴染の喪主

 若しかしたら、人生最後の長生き勝負には、こちらが勝つかもしれない

 昨晩、近所にいた人の通夜に行った。享年95歳。近所の人といっても、20年前に県外の息子のところに行き、4年前に体を壊して福井の病院に入っていた。だから、ここ数十年会っていない。
 じつは、その息子というのが葬儀の喪主で、私の幼馴染であった。
 生まれたのは、私より5か月ほど遅い。高校1年のとき鉄棒で大けがをし、私の1年遅れとなるまで、幼稚園~中学校からの同級生であった。

 私が有利だったのはそれだけである。
 幼い時から彼は、私の必ず1つ上を歩んでいた。たとえば幼稚園のとき、近所の駄菓子屋で私が1等の当たりくじを引いて喜んでいたすぐ隣で、彼はすんなりと「特等」を引いていた。小学校では、私がテストで90点をとると、彼は必ず95点か100点であった。またお互い同じ学年の妹がいたが、私と彼が小学校から帰ってきたとき、彼の妹だけ「お兄ちゃん」といって彼に飛びついたのが記憶に残る。
 極め付きは小学校卒業の時、私が成績優秀の「学校賞」を貰って得意になっていたら、彼は平然と最高レベルの「県知事賞」を受賞していた。

 その後中学・高校と、彼は常に学年のトップクラス。成績の落ちた私は、いつしか彼の背中さえ見えなくなっていた。東大法学部から裁判官になり、国立大学の教授へと、エリートコースまっしぐらである。とくに裁判員制度に関して一家言持っており、関連の著書も多い。いまや法曹界の重鎮である。

 その彼とは30年ほど前、近くの実家を見に来たとき、簡単な言葉を交わした。それ以来会っていない。この機会、久しぶりに彼の顔をみようと、通夜に参列した。いくらエリートになっても、お互い覚えているであろう。

            祭壇 H30.6.09

 しかし残念ながら、喪主の席に彼の顔を見ることはできなかった。
 主催者である彼の奥さん(らしき人)に聞くと、体調が悪く臥せっているということであった。詳細な病名までは聞けなかったが、喪主として通夜に出られないくらいだから、かなり悪いのではないか。
 若しかしたら、人生最後の長生き勝負は、こちらが勝つかもしれない。


 もっとも、体調が悪いというのは方便であって、ほんとはノーベル賞なんかでストックホルムかどこかへ行っているのである。幼いころ駄菓子屋で「特等」をとった運と実力は、まだ衰えていないと思う。
 どう考えても、彼には勝つ気がしない。
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