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閉じていく帝国(書評)

 もしかしたら水野氏は、日本を中心とした「大東亜共栄圏」が望ましいと考えている

 水野和夫氏(経済学博士)の「閉じていく帝国と逆説の21世紀経済」は、以前私がこのブログで述べた水野氏の論説を、より詳細に語っている。水野氏は、歴史、哲学、宗教学、社会学、文学などあらゆる書物から、「歴史の危機」を読み解く手がかりを得たという。

 いまグローバル経済に振り回される「資本主義が終焉」し、世界が「閉じていく」なかでなにが求められているのか、独自の視点で解説している。
 この本で気が付いた点をプロットしてみよう。

①先進国の交易条件は、1970年(オイルショック時)を境に、プラスからマイナスに変わっていった
②日本では交易条件が悪いとき(資源高)、資源国である輸出先の景気につられ景気がよくなる。つまり、高成長が望めない経済構造になった
③セイの法則(供給が需要をつくる)が成り立つのは、資本主義、民主主義、動力革命が一体化し、人々の欲望を満たす生産革命が起きたから
④イノベーションは、世界を「結合」する19世紀の動力革命がすべてだった。その後の電気、IT、IOT、AIはその連続にすぎない
⑤歴史上、平時の金利は2~5%の間である。5%以上は戦争などの緊急時、2%以下は投資先がないという例外時であった
⑥現に日本の低金利社会では、コンビニは飽和状態で、ヤマト運輸は売上高を挙げるほど利益率が下がっている
⑦アベノミクスの金融緩和政策は、この流れに逆行している
⑧17世紀は海賊による略奪、19~20世紀は植民地、現在の自由貿易、電子・金融もすべて、先進国・覇権国家による「蒐集(略奪)」である
⑨陸の国であるEU帝国では、米国の電子・金融空間と異なり、利潤はおおむね働く人々に還元される
⑩リーマンショック後、日本は資本家や超巨大企業から成る「資本帝国」アメリカの使用人になり、ドイツを中心とした「EU帝国」は加盟国の主権を制限しながら経済圏を閉じていく。
            アリとシャクナゲ 
⑪2015年のチャイナショックで、中国が長い低迷期に入った。(日本のバブル崩壊期と重なる)
⑫現在の主権国家システムは、16世紀に血みどろの宗教戦争を棚上げするための試みで、応急処置に過ぎない
⑬21世紀において、国民の所得を増やす「実物投資空間」の膨張が止まり、国民と資本とに間に軋轢が生ずる
⑭「長い21世紀」とは無限に「蒐集」できる空間が消滅する時代である
⑮日本政府がなすべきことは、プライマリーバランスを均衡させ、人口減少を9000万人当たりで横ばいにさせることと、安価なエネルギーの確保に努める
⑯日本は、日本海から南シナ海までの「海」を「陸」から囲み、地域帝国を目指すべき
⑰安全保障や環境問題を対処する地域帝国と、人々の生活や企業活動を包括する地方政府の2層システムをつくる
⑱原油は、採取コストが賄えなくなるエネルギー収支比が2以下になる、エネルギーの崖に近づいている
⑲ドイツが選択した「閉じた帝国」のEUに、日本も加盟申請を行う
⑳民間実物資産や個人金融資産が少なくなれば、日本が財政破綻する


 これらは、魚の目~鳥の目から見た観点である。
 水野氏は、グローバリゼーションを否定し、一定の地域経済圏ですべてを賄おうとする。たとえば、「⑯日本海から南シナ海までの「海」を「陸」から囲み、地域帝国を目指すべき」という水野氏の提言は、まさに日本が大東亜共栄圏をめざし、欧米列強に立ち向かっていったことを彷彿とさせる。まさに、保守の神髄である。


 水野氏は、他の経済学者とはだいぶ毛色が異なっている。またアベノミクスには批判的な立場である。
 だが、アベノミクスの効用もある。この景気浮揚策がはじまってから、目だって自殺者数が減っている。平成10年に前年比35%増の32863人の自殺を記録してから、平成23年までずっと3万人を超えてきた。アベノミクスがはじまった平成25年あたりから目立って減少、2017年は21,321人で、バブル期以前に戻っている。
 すべて、ほどほどがいい。
 それに、私が何度も指摘してきたように、国の借金が増えるほど国民の金融資産も増えるので、⑳はありえない。なぜ国の借金がいけないのか、私にわかるような説明をしてくれた本や人は誰もいない。
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