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トヨタ方式の実践 トヨタのカタ③

 改善の内容をアドバイスするのでなく、現場の人々が自分たちで改善できるように

 前回の「トヨタのカタ②」の意図するところを、私の体験を踏まえて述べてみよう。
 私がトヨタ方式に興味を持ちはじめたのは、大手の眼鏡枠製造会社に勤務していた、30代のころである。ほとんどの国内眼鏡枠製造業は、多品種少量型であるにかかわらず、大量生産型で旧態依然のものづくりを踏襲していた。設備配置は、典型的な機種別配置で、トップは同じ型の機械が整然と並んでいる見栄えをなにより重視していた。

 私自身は開発部門にいたため、直接生産現場に係ることはなかった。それでも、生産の責任者が工場を「改善」するたび、設備が集められ作業導線が複雑になっていくのを、複雑な思いで眺めていた。新郷重夫氏、古畑友三氏、関根憲一氏などの著作とは、まるで反対のことをやっている。当時はなにかおかしいと思っても、現場経験が乏しいため、本だけの知識でベテラン社員を説得することはできなかった。中小企業診断士の資格を得たのはそのころである。
            未来へのトンネル H29.12.19
 自分でものづくりの本格実践が出来るようになったのは、30代後半、子会社の部品工場を任せられてからである。そこから独立までの3年あまり、工場責任者としてトヨタ方式をベースに工程改善に取り組むことができた。
 そこで行ったことを、以下簡単に示す。

 最初は、見える化である。
 それまで、20数台あった自動機械の運転は、いつどの機械が何を加工するのかよく分からないまま進めていた。セッティングも担当者任せで、生産管理も何もあったものではない。そこで、機械ごとに割り振った大きな日付管理版をつくり、製品別の生産指示書を貼り付けた。単純だがこれだけで、それまで担当者の頭の中にしかなかった生産計画が立てられるようになった。

 また、工具や治具、原材料、雑多な仕掛品の整理整頓、置き場所と表示を明確にした。最初の半年、ほとんどこれだけに費やした。おかげで、はじめて入ったものづくり現場も、次第に様変わりしていった。

 つぎに、多工程持ち作業の導入である。これは現場の女子社員には評判が悪かった。
 立ち作業で、いくつもの工程をかけもちするのは労働強化だといって、反発を食らった。説明してもなかなか分かってもらえない。機械をセッティングしても、いつの間にか元に戻ってしまう。当時女性社員の憧れだった私が苦労したのだから、並みの管理職には無理であろう。

 転機は、ある部品の納期が迫り、にっちもさっちも行かなくなった時である。思い切って10工程ほどある(半自動)加工機械を工程順に並べ、レイアウトを変えてみた。夕方から2時間ほどかけ、担当課長と2人で機械を移動した。翌日から立作業に理解を示す20代の男子社員をオペレーターとして、作業をやってもらった。
 なにが変わったか。
 まずそれまでは所在が明確でなかった仕掛品が工程順におかれ、探し回る手間が無くなった。もちろん工程間での数読みや持ち運びもない。切削加工で取り外した後でバリ取りし、そのまま次の加工機械にセットする。これで取り置きの手間が無くなる。すべて1個流しとまではいかなかったが、仕掛が少なくなりリードタイムも早くなった。異常の発見が早くて、手直しも激減する。いくつか簡単な機械をつくりながら改善を進め、1~2か月後にはこの部品加工の生産性は倍近くになった。

 残念ながらコストダウンが本社にバレたため、大幅値下げを要求されてしまった。
 この部品工場では、そのあといくつか自動機械を開発したが、ローコストでこれほど効果があがることはなかった。
 この経験をもとに、自らが部品工場を立ち上げたことは、以前このブログで書いた。自分の会社なら、成果がそのまま懐に入る。このとき年代に応じた仕事の姿勢があることに気が付いた。
                守り神
 50代から行ってきた今の仕事では、製造業の現場改善のアドバイスをすることもある。素直に従ってくれるところもあるが、大方はなにかと理屈をつけなかなかやらない。その場合、云いっ放しで終わる。私がトップでやったときでさえ苦労したのだから、いくらコンサルタントだろうが部外者の云うことを聞く方がおかしい(もちろん多くの工場の中には、参考にしたいところもあった)。

 ほんとは、改善の内容をアドバイスするのではなく、魚の釣り方を教える。つまり現場の人々が、自分の力で改善できるようでなければならないと思っていた。そもそも現場は常に変化する。臨機応変に対応できるのは現場だけである。コンサルタントが指摘したときの状況が続くことはない。

 そのことを理論的に(長々と)説明した著作が、「トヨタのカタ」(マイク・ローザ―)であった。
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