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失敗の責任 「続続失敗百選」より⑤

 誰かに責任を取らせるのは、ゼロリスクを求め何も進まないよりはるかに良い

 以前は、原発のような巨大技術になると、装置や運用方法についての不具合を改善することはタブーとされていた。複雑なシステムの一部を修正すると、別なところでもっと大きな不具合が発生する可能性があるからである。したがって、このようなシステムではPDCAの継続的改善でなく、決められたことを確実に行うことが要求されてきた。医薬品、医療の世界でも同じで、現場での勝手なカイゼンはできなかった。

 それが、福島第一事故の検証では、つぎつぎと装置の弱点が洗い出され、膨大な改良点が見つかっている。改善によって、間違いなく福島のような過酷事故の確率は、激減することもわかってきた。

            般若

 しかし、それでも事故はゼロにはならない。もし事故が起こったら、誰がどのように責任を取るのであろうか。
 裁判では、失敗を予見できたかどうかが、責任を問われる大きな要素である。知っていたら犯罪で、知らなかったら無罪である。これでは、なにか事故があって責任者が無罪になったら、その人は無知(バカ)だったということになる。国民にバカになれと言う制度がいいとは思えない。

 一方で、「福島原発、裁かれなくてもいいのか(古川元治他)」のように、『今までに起きたことがない「未知の危険」であっても、起きる可能性が予測される危険については、責任を問える』とまで言う人がいる。すべて起こったことには誰かが責任を取らなければならないとなると、ヤクザの鉄砲玉である。それでも、ゼロリスクを求めて何も進まないよりはるかにましで、このやり方は一理ある。そのため企業には会長がいるし、謝罪要員としてホテル支配人が存在する。

           仁王

 また技術論的には、中尾氏の言う「まさか」の失敗は、どこまで失敗の発生確率を許すかという問題になる。一般には、法律や規範、道徳、世論の動向などで決まるが、それではきりがない。世間は感情的である。「使い続ける限り事故が起きたらメーカーの責任」としたら、製造業は成り立たない(製造物責任は10年で消滅)。

 そこで技術者は、安全率を見込んで装置やシステムを設計する。普通は4倍程度である。安全率は、多ければいいというものではない。設定の失敗がまた、恐ろしい状況を生み出す。

 その典型的な例が、福島汚染地区の放射線量基準の設定である。国際的には、100㎜SVまでなら問題ないとされる。安全率5倍を見て、20㎜SVが基準である。被爆地でなくても、その程度のところはいくらでもある。ところが日本では、感情(勘定)に任せ1㎜SVという、とんでもない基準を設定してしまった。これでにっちもさっちもいかなくなる。いまだ復興が進まないのはこのためである。必要以上に厳しい基準は、(神戸製鋼のような)検査偽造が発生する温床ともなる。

 また、福島第一の原発事故では、1000年前の貞観地震の再発を想定しなかったとして、非難されている。ではどこまでの災害を想定すればいいのか。いまでは、1000年前どころか、40万年前以降の活断層や、歴史上起こった100倍もの破局噴火にまで関心は移っている。そこまで見るなら、原発事故以上の災害は、いくらでもある。視野が狭い人たちは、原発事故しか見えない。


 日本では絶対不可能を無視し、いまだゼロリスクを主張する人が無くならない。善意に解釈すれば、大事故のバイアスが残っているからで、悪く言えば無知な阿呆か補償金目当ての権益者である。
 日本は、「こんな人たち」を相手にしているから、何も進まない。政治家は、嫌われる覚悟のない人は、なってはいけないのである。

   「続続失敗百選」⑥に続く
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