FC2ブログ
RSS

文書主義が現場を殺す 「続続失敗百選」より④

 すべてが文書で示されれば、マニュアルにない事態に対応することができなくなる
 
 いま日本のものづくり現場は何かおかしい。原発事故だけでなく、昨年から、日産や神戸製鋼、三菱マテリアルの検査不正発覚など、異常とも思える不祥事が続いている。
 これに関し、中尾政之氏(東大機械科教授)は「続続失敗百選」の中で、「シュラウド事件」と呼ばれる、東電のトラブル隠蔽とその後の経過について述べている。この事件は、現在へ続くものづくり不祥事の重要要因を示唆している。 

 「シュラウド事件」は1989年、GEが福島第一1号機の定期点検中に、原子炉内シュラウドにクラックを発見し、その証拠ビデオを東電の要請に応じ、隠蔽した事件である。10年後の2000年、当の検査担当者が通産省に内部告発、保安院がGEに対し本物の検査報告書を提出させ、東電のトラブル隠しが発覚した。とくに原発9基のシュラウドクラックを隠蔽したことが大問題になった。

 その結果、東電社長が辞任。東電の原発はすべて停止のうえ、プルサーマル計画は白紙撤回された。5機のシュラウド修理には、750億円を費やした。
 その後、「安全管理体制」を徹底強化する。

 問題は、その「強化」された管理体制の中身である。
①原子力立地本部を6部に分割(組織横断的取組は弱体化)
②原子力品質監査部を独立新設し、マニュアルに基づく内部監査を強化
③保安院は、安全管理審査の規制を強化。詳細なマニュアルの整備とエビデンス(証拠となる記録)の作成を課す。
④品質マネジメントシステムによる保安院の審査を年4回実施。指摘・指導が激化した。
⑤東電の文書管理の業務量が激増。マニュアル至上主義が先鋭化した。

       キツネつき   文書作成

 ここからがおかしくなる。
 そもそもシュラウドというのは、単なる隔壁である。クラックが入っていても、致命的なトラブルにはならない。福島第一原発を作った本家のアメリカでは、水中溶接での補修でよいことになっていた。日本では、「クラック無きこと」という、非現実的な古い規定を順守していたため、もしクラックが見つかったら大ごとになる(現に、余計な手間をかけたあげく修理に750億円も費やした)。事情をよく知った人ほど、隠そうとするはずである。

 悪いことにはこの事件の結果、マニュアルの整備とエビデンス(記録)の作成で、文書量はとんでもなく増大した。職員は、現場に出る機会がないままエネルギーが消耗していく。わずかな安全面での改良すら、詳細なマニュアルとエビデンスを要求される。現に、これまでの東電やもんじゅの「不祥事」は、ほとんどが文書の不整合や記録の不一致でしかない。これだけ文書で縛られていると、現物で改善しようとする意欲は削がれる。

 その結果、現場を熟知している人がどんどん少なくなる。すべてが文書で示されれば、マニュアルにない『まさか』の事態に対応することができない。「現場、現物」に代わって、「文書、記録」がすべてになってしまった。

 この状況が、福島第一の事故をもたらす。それを反省することもなく、文書主義はいまの規制委員会とのやり取りにまで、連綿と続いている。原発再稼働の申請書類は、10万ページを超すともいう。あげくには自殺者まで出した。文字通り、文書主義が現場を殺してしまったのである。

   「続続失敗百選」⑤に続く  
スポンサーサイト



トラックバック
トラックバック送信先 :