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リスク不感症 「続続失敗百選」より②

 これまで大した事故が起こらなかったのだから今度も大丈夫と言う感覚

 多くの失敗要因のなかで、中尾氏が最も重視していたのが「リスク不感症」である。これまで大した事故が起こらなかったのだから今度も大丈夫、と言う感覚である。これは、誰の心にもある。
 折しも昨日突然、本白根山で噴火が起こり、スキー客がいるところに無数の噴石が降り注いだ(ヘリコプターの窓枠や不時着などで騒ぐのがバカバカしい)。隣の白根山とは異なり、しばらく活動していなかったので、まったく無警戒だったという。
 このような、想定外の事例はいくらでもある。

①福島原発事故
 2001年にアメリカは、同時多発テロに遭ったことで、原発に対する飛行機自爆、電源喪失などの対策(B.5.b)が検討・実施されていた。日本の保安院にも説明されたという。日本でも、2000年ごろから貞観地震の調査が行われ、1000年に1度の巨大津波対策が検討されていた。
 それでも日本では、2011年まで安全に原発運転がなされていたので、これらの減災対策を実施に移すことができなかった。これに文書主義などの組織疲労が重なり、リスクに対する不感症が加速されていった。これが、福島原発の過酷事故につながっていく。

②津波による被災
 東日本大震災のとき、大槌町では地震の40分後に津波が襲来し、住民の1割が逃げ遅れて被災した。とくに60才以上の高齢者の割合が多かった。足が遅くて逃げられなかった人はわずかである。なぜ高齢者が多かったのか。
 多くの高齢者は、昭和の三陸津波やチリ地震津波を経験し、生き延びていた。今回の津波の規模は、それを大きく上回った。高齢者は、かっての津波到達地点の「成功体験」によって、「今度も大丈夫」という気持ちが、リスク不感症につながったのではないか。

③津波予報
 東北大震災のとき、気象庁が3分後に発令した津波警報は、過小評価のM7.9をもとにしたものだった。この津波警報では、3M高さの予想だったため、これなら家の2階に上がれば大丈夫と考えた人がたくさんいたはずである。
 じつは沖合の水圧計には、大津波の兆候が示されていた。だがこれらは故障が多く、気象庁では、まさかこんな大津波とは考えなかったという。その結果このデータは無視され、大規模な津波警報を出すタイミングが遅れてしまったという。

④笹子トンネル天井落下
 トンネル内の天井版は、トンネル外壁にボルトで固定している。コンクリートに穴をあけ、埋め込みボルトを接着剤と一緒に固定するものである。笹子トンネルでは、施工35年後に接着剤が劣化し、ボルトが抜け天板が落下。通行中の自動車が潰され、9名が死亡した。
 じつはこの事故の6年前、ボストンで、同じようなボルト抜け・天板落下による死亡事故が起きていたという。ボストンでは速乾性の樹脂を使っており、定期点検も不充分であったらしい。笹子では速乾性を使っておらず、点検者のモラルも高いということで、ボストン事故を無視してしまった。対策を怠ったため、ボストン以上の惨事につながったのである。

               白根山系

 普通われわれには、いろんなバイアスがかかっており、それがリスク認知を歪め、「想定外」が発生する。おもに、以下のようなバイアスによるものである(日本技術士会・青本による)。
 リスクを管理するものは、これらのバイアスがあることを認識しておかねばならない。

1)正常性バイアス
 異常性がある程度の範囲の場合、こんなものは普通であると考えてしまう傾向のこと。リスク情報の異常性を減じ、日常性の中に埋め込んでしまおうとするもの。

2)楽観主義バイアス
 何か起こった時、破壊に至るような見方よりも日常からの軽い逸脱として、楽観的に解釈しようとする傾向。心理的ストレスを軽減しようとする働き。

3)ベテランバイアス
 過去のリスク対処で得られたリスクに対する耐性が災いし、それ以上の新たなリスクに対する判断を遅らせる可能性のこと。(まさに②が当てはまる)

4)バージンバイアス
 経験したことのないリスクに対し、リスクを過大に、あるいは過少に評価してしまい、正確なリスク認知を得られない可能性のこと。

5)カストロフィーバイアス
 極めてまれにしか起きない被害規模の巨大なリスクに対して、リスクを過大に見てしまうこと。また身近で起こった出来事が、同じように起こるのではないかと思ってしまうこと。

              白根山

 失敗の責任⑤で延べるように、世の中にゼロリスクはあり得ない。また、わずかなリスクでもそれ以上にリスク軽減をしようとすれば、膨大なコストと転嫁リスクが発生する。放射脳患者のように、精神に異常をきたす人も多くなる。
 ほんとのゼロリスクを求めるなら、この世に生を受けないことしかない。
 幸せに生きようとしたら、良寛のように達観することである。

  「続続失敗百選」③に続く
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