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起業の失敗② 眼鏡部品製造業

 事業の安定的な継続に必要なのは、お金より健康であった

②眼鏡部品製造
 つぎにロストワックスでの眼鏡部品製造である。
 これは目的の形に成形したワックス(蝋)を、石膏型に埋め込んで加熱し、ワックスが溶けた空洞に、溶融した金属を流し込む鋳造技術である。埼玉近郊におけるアクセサリー工場の技術を、眼鏡製造に取り入れようとした。

 この事業を始めるまでは、完成された生産技術を忠実にこなせば、部品が完成すると思っていた。やり方は、アクセサリー業界内で周知されていたし、基本的な製造技術は設備メーカーが教えてくれる。だから、眼鏡部品としても採算がとれるはずだった。あとは、細かい改善の積み重ねが、利益を増やす。
 
               丸メガネ
 しかし既存の技術であっても、アクセサリーと眼鏡部品とは、作り方が大きく異なる。製品単価がまったく異なるからである。アクセサリ―の場合には、1個当たりの付加価値は、少なくとも1000円から数万円。一方、眼鏡部品の相場は、単体で数十円からせいぜい200円である。じつに10倍以上の開きがある。

 じつは、この価格の違いが大きな問題であった。事業として成り立たせるためには、製造コストを大幅に削減しなければならない。
 ところが実際に部品を製作すると、「正規」の工程以外に、余計な工数が入る。
 まず、製品歩留まりが悪い。最初のうち、良品はせいぜい半分程度。ある程度熟練しても、8~90%である。さらに、鋳造したままで顧客に提供できるわけではない。鋳造品には、一定の割合で亀裂やピンホールがあり、そもそも表面状態が荒すぎる。それらを丁寧に見きわめ、修正・磨き上げての歩留まりである。

 したがって、製品1個当たりのコストは、その余計な手間をどれだけかけるかに左右される。さんざん磨きまくったあげく、ピンホールを発見し廃棄することはしばしばであった。
 大幅なコストダウンのためには、従来技術とは異なる方法を考える必要がある。ゲートの位置やツリーの形状、焼結温度とその時間変化、合理的な表面研磨の方法など。何とか顧客に受けいられる品質での製造方法を確立し、利益を計上できるまでには、半年から1年を要した。

 それでも、かなりの部分は人間様の「頑張り」に依存する。眼鏡部品として、細心の気配りと細かい修正作業も必要である。座り作業で、無理な姿勢を毎日10~15時間、年300日以上も続けていた。
 そのため、全身の骨格に異常を及ぼすようになってしまった。背中から足腰の痛み、しびれが慢性化し、整骨医はもちろん、針治療に通っても治らない。起業して7年目には、とうとう事業を辞めることになった。運動不足とストレスも加わり、50才にして体はボロボロである。このまま続けていたら、あと5年ぐらいで、この世とお別れしていたに違いない。

               メガネーシャ H29.10.11

 幸いこの事業を辞めて、ウソのように全身の痛みが消えた。ここで実感したのは、事業継続に必要なのは、お金より健康だということである(細く長く事業を続ける選択肢もあったかもしれない)。

 それから20年。
 そろそろ、男の健康寿命が尽きる年代である。同年輩の人が、つぎつぎ旅立っていく。私も体内の至るところ、がんの兆候が出てきた。いつまで健康でいられるか。いまや、親より長生きできるか、熾烈な競争を行っている最中である。
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