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日本企業のゆくえ② 分化された企業(書評)

 「分化」には、メリットもあればデメリットもある。最適な方法を採用するだけ(太田肇氏の著書より)


 中野剛志氏が、企業や政策の在り方からイノベーションを説く一方で、企業内の個人一人一人のやる気を考えることで、企業の盛衰を論ずる人もいる。

 太田肇氏(同志社大教授)は、「なぜ日本企業は勝てなくなったのか」において、「分化」「未分化」という、耳慣れない概念を提案している。
 太田氏の云う「分化」とは、「個人が組織や集団から制度的、物理的、あるいは認識的に分別されること」であり、「未分化」とは「個人が組織や集団の中に溶け込み、埋没してしまっている状態」である。チーム競技でも、野球やサッカーはある程度「分化」され、「未分化」の綱引きやボートは個人の力が見えにくい。

 太田氏によれば、日本企業は「未分化」のために生産性が劣化、イノベーションが起きない。仲間うちの「たこつぼ」に入り込んでいるため、世間の常識が理解できず、企業不祥事も絶えない。また仕事の機能が明確になっていないから、成果主義や女性の登用もできない。雑用が多く創造性のある仕事ができないなど、さまざまな障害が発生している。

 したがって、企業が「分化」されると以下のようなメリットが生まれる。
①仕事の分担を明確にし、裁量権を与えることで、やる気の天井が取れる
②異質なチームワークでイノベーションが生まれる
③個人が分化することで、出世競争などゼロサムがプラスサムになる
④部下を管理したりまとめたりする仕事は大幅に減る
⑤かえって人間関係がよくなり、つながりがよくなる
 
 これらについて太田氏は、教員や医師、番組製作者等の例を挙げてメリットを強調している。企業内においても、ボルボ社のチーム生産方式、社内独立制度などの成功例を示している。また究極の「分化」は、スピンアウトして自営業になることである。

            成仏 H27.12.15

 しかし、このような「分化」が、すべての組織や集団、そしてその構成員にあてはまるわけではない。「分化」し機密事項が分散したため、ノウハウの蓄積ができなくなることもある。まさに診断士協会の会員同士が、そのジレンマに陥っている。鯖江の眼鏡製造の効率が悪いのは、専門事業ごとに「分化」しすぎたためで、管理者が管理業務を削減できる代わり、もっと手間のかかる外注管理業務が増える。組織の縦割り弊害や頻繁に「医療崩壊」が起こるのは、役人や医師の専門家が進みすぎたからである。

 さらに太田氏の提案で致命的なのは、「分化」するのにはどうすればいいのかという手段が全く見えないことである。かろうじて、「勤務時間や場所などの行動と機能を切り離して考える」と述べているだけで、具体性に乏しい。また、スピンアウトして自営業になるというのは、具体的ではあるが「分化」そのものを説明しているに過ぎない。
 
 むかしから労務管理においては、職能資格制度など業務内容を明確にし、ウェイト付けをしようとする試みは、いやというほどなされてきた。だがこれは、できそうでできない。ことごとく失敗している。流動的な仕事を分化しようとすればするほど、地獄の底なし沼に沈むようなものであった。それを解消できるのか。

 太田氏の提案は一考の余地はあっても、全面的に取り入れることはできない。どんなものにも、メリットもあればデメリットもある。自分たちの組織に最適な方法を採用するだけである。
 なにごとも中庸。ものはほどほどなのである。
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