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日本企業のゆくえ① イノベーション

 短期主義より長期主義、グローバリゼーションからクローズドシステムへ(中野剛志氏の著書より)
 
 日本の大企業の凋落が目立つ。もちろんそれぞれの企業は、必死に再生を目指している。
 では、日本の企業は根本的にどうすればいいのか。

 中野剛志氏は「真説・企業論」のなかで、日本経済の低迷について、グローバリゼーションやオープンイノベーションなど、これまで巷で言われていたことを疑問視し、独自の視点で分析している。
 その要旨は以下のとおりである。

①「アメリカは、多民族のベンチャー企業がイノベーションを起こし発展している」という神話がある。これは、スコット・シェーンが主張しているように、まったくの幻想である。実際アメリカは過去40年間「大停滞」と呼ぶべき状況にある。

②アメリカにおけるイノベーションは、ほとんどが軍事技術からの転用である。シリコンバレーが繁栄しているのは、ミサイル、衛星、軍事および宇宙関連の政府関係からの調達が半分近くを占めていたからである。

③アメリカのハイテクベンチャー企業のほとんど(70%)は、ベンチャーキャピタルから最後に資金供給を受けて、2年以内に倒産している。ベンチャーキャピタルは、リスクをとることよりリスクを分散している。リスクは短期しか見通せない。

⑤イノベーションを起こすのは、意欲を持った人である。その人材を一目で目利きできることはありえない。

⑥事業を多角的に運用している日本の大企業は多様性をもつ。また経済合理性のない、硬直した組織がイノベーションを起こす。イノベーションには、5年~20年という時間がかかるからである。

⑦イノベーションの本質は、不確実性の中での資源の投入である。リスクが大きいほどイノベーションも大きくなる。その最大のリスクをとることができるのは、国家である。国家こそ最大の起業家である。

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⑧限定された長期的関係の継続がイノベーションにとって重要。シリコンバレーも、濃密な人的ネットワークが張り巡らされ、起業家、資本家、大企業、政府はコネや人脈で強く結ばれたクローズドとなっている。オープンなら、ITベンチャーの集積地は全世界に広がっているはず。

⑨ベンチャーキャピタルの成功は、起業によるベンチャーの支援によるものではなく、単にベンチャー企業という資産を巡る巧みな金融取引によるものに過ぎない。この金銭的成功を、イノベーションの成功と混同している。ベンチャーキャピタルの目利きは、人材でなく投機の目利きであった。

⑩イノベーションは人的能力の成長であって、それには長期雇用が不可欠である。
 日本で労働者の解雇や賃金抑制が難しかったとき、企業はイノベーションと生産性の向上によって競争力を高めることを目指した。構造改革でのリストラや非正規労働者の増加によって、技術開発よりも賃金抑制による利益を求めるようになった。それで日本の成長が止まった。

⑪その結果消費が低迷すると、企業は海外へ進出する。グローバリゼーションは人材や技術のアウトソーシングに拍車をかけ、アメリカと同じく、イノベーションを生み出す力は空洞化した。オープンイノベーションは企業の短期主義の結果であり、イノベーションを阻害する。

⑫アメリカでは、経済の金融化や株主重視、とりわけストックオプションと自社株買いによって短期主義が助長された。その結果ベンチャー企業の開業率は低下し、イノベーションが起きにくい国になった。そのアメリカを真似た日本で、イノベーションが起きにくいのは当然である。
 それでもまた、官僚やビジネススクールでは短期主義を教えている。

 
 日本で先頭を切ってTPPを批判していた中野氏らしく、徹底してグローバリゼーションの弊害を説いている。つまり短期主義より長期主義、アメリカ型のオープンイノベーションから、日本型のクローズドシステムへの転換である。
 経済界でいわれていることとは、まるで反対であるが、説得力がある。また「イノベーションに対し、最大リスクをとれるのは、国家である」との指摘は、腑に落ちる。全面的な反論は難しいのではないか。高速増殖炉など、次世代エネルギーの開発は、絶対に中断すべきでない。


 それでも、最終的には人の意欲と能力が大きく左右する。その方法は千差万別である。クローズシステムだけで、それを醸成できるかどうか。やり方次第では、オープンイノベーションもあり得る。これもほどほどであろう。
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