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いちほまれの運命

 市場で高い評価を得られるかどうかは、最初の印象で決まる

 福井県は今年5月、コシヒカリに変わる県の代表米を開発し、これを「いちほまれ」と命名した。先日、「いちほまれ」開発の中心である、県農業試験場の富田桂氏の講演を聞いた。

 100年前、福井県のコメづくりの世界は、まさに戦国時代さながらの百科繚乱であった。「白ちんこ」と言う怪しげな名の稲をはじめとして、数十種類が覇を競っていたという。農業試験場では、その中の優良種を掛け合わせ、繰り返し品種改良を行ってきた。何代もの経過を経て、およそ40年後、農林1号と農林22号の間に生まれたのが、コシヒカリである。

 コシヒカリが、誕生して60余年。福井で生まれたコシヒカリは、新潟県をメインに北海道を除く日本全国で栽培されてきた。ピークを過ぎたとはいえ、コシヒカリはまだ、日本のコメ生産量の40%近くを占めている。

       必死の草刈り H28.7.02

 しかし現在、全国各地で新たな品種が栽培されるようになってきた。北海道では「ゆめぴりか」、青森の「青天の霹靂」、宮城「だて正夢」、「新之助」、「富富富」、「ひゃくまん穀」など、ユニークな名前の新種(ほとんどがコシヒカリの子孫)が、つぎつぎと出現している。あたかも100年前の「千石」時代に戻ったようである。

 なぜ、品種が増えていったのか。
 各地が地域おこしのため、新品種を売り出そうとしているからだけではない。
 温暖化によって平均気温が上昇し、これまでコシヒカリを栽培していた地域では、品質の低下が目立つようになってきたからである(もともと「コシヒカリ発祥の地」福井より、平均気温の低い新潟の方が、コシヒカリの栽培に向いていた)。品種改良技術が向上しそれぞれの地域で栽培に適し、差別化された良質なコメをつくろうとするのは必然である。

 福井も当地の気候に適し、おいしくて病気に強く、栽培しやすい品種をつくろうと、研究・開発に力を入れてきた。冒頭で述べたように、長年の研究が実ってようやく新種「いちほまれ」が生まれたというわけである。20万種の中から、「味」を最重要に、選び抜かれ「いちほまれ」と命名された。
 本年度は130軒の先進農家で試験栽培を行い、来年から本格生産に入る。

          サクラ咲く H29.3.26

 問題は消費者にとって、ほんとにおいしい米ができたのかどうかである。
 食べ物の味は難しい。その人の食べる状態や、米の場合は焚き方で大きく左右する。一定以上のレベルになれば、「おいしい」と暗示をかけるだけで、おいしくなる。したがって価格設定やイメージ戦略など、最初の販売方法が大きく影響する。
 今年の秋、「いちほまれ」は、どのような形で我々の口に入るのか。ファスト&スローで書いたように、最初ですべては決まる。
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