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宇沢弘文の経済学から(書評)

 電気料金を車の維持と同じくらい高くすると、人々は電気をありがたく思う

 先年亡くなった宇沢弘文氏は、「哲人経済学者」の異名をもち、社会的共通資本についての考察などで世界の経済学者に影響を与えていた。その彼は1974年刊行の「自動車の社会的費用」で、自動車を徹底的に毛嫌いしている。

 ≪現在日本で生活している人々は、絶え間なく自動車の脅威にさらされている。朝早くから夜おそくまで、場所によっては一夜中、自動車が私たちの生命、健康に害毒をもたらし、生活環境、自然環境を汚染し、破壊し続けている。・・≫

 当時は自動車事故で、年間100万人が負傷し、2万人が亡くなっていた。激減したとはいえ、いまだ毎年約80万人が負傷し、5000人近くが亡くなっている。ざっと、戦後からこれまで、日本だけで5000万人が負傷、60万人が死亡したということになる。排ガスなどの悪影響を含めると、実際その数倍はある。
 日本はやや落ち着いてはいるが、東南アジアを中心とした途上国では、以前この勢いが続いている。これまで、全世界では数億人単位が負傷し、死亡者は1000万人以上にはなる。これは大戦争における、戦闘での死者を大幅に上回る。

           危険な赤い車
       
 それでも今の世で、自動車の無い生活は考えられない。ひところに比べ、事故の割合は圧倒的に減ったし、自動車での人やモノの移動は社会の経済活動の大きな割合を占めている。自動車によって失われた人命より、救われた命の方が圧倒的に多い。だから人口は増えつづける。このことは、ほとんどの文明に言える。 
 今後も、いくら犠牲を払ってでも、自動車は普及し続ける。


 一方原発は、ほとんど犠牲者がいないのに、先進国では毛嫌いされる。電気が無いと社会生活が破たんするのは、自動車以上である。人々が合理的にものごとを考えることができなくなっている。

 もっとも車を買うと、いろんな税金をとられるし、保険もかかる。家庭の電気代はそれに比べたら、圧倒的に安い。だから電気は、空気や水と同じだと思っている。電気料金を今の10倍にすれば、人々の考えも変わるかもしれない。
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