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経済発展と健康寿命

 日本が生き残るためには、国家投資によるイノベーションが必要である

 吉川洋氏(立正大教授)の「人口と日本経済」を読んだ。比較的ページ数が少なく、わかりやすく読みやすい。内容は、これまでの人口と経済活動との関わりについて述べ、そもそも経済発展が必要かどうかの言及まで行っている。

 著書の主なポイントは、以下のようなものである。
①人類の歴史では、人口過剰が問題になったときもあれば、古代ギリシアのように人口減少で滅びた国もある。
②経済成長は人口の増加より、イノベーションによるところが大きい。
③つまり明治初めから現代まで、人口は3倍でも実質経済は100倍にまで膨らんでいる。
④需要も大事。高度成長時には、農村からの移動に伴う世帯数の増加がけん引してきた。
⑤具体的なイノベーションとして、消費者物価指数の基準年における改廃品目。
 1960年 主な追加品目 乳酸菌飲料、自動炊飯器、冷蔵庫、トースター、 
     主な廃止品目 マッチ、わら半紙、インキ
 2010年 主な追加品目 大人用紙おむつ、電子辞書、高速バス代、ペット美容院代
     主な廃止品目 やかん、草履、テレビ修理代、アルバム、フィルム
⑥先進国では、AI、ITによるイノベーションがはじまっている。
⑦戦後少なくなった貧富の格差は、ここにきて戦前のように拡大してきた。
⑧平均寿命は、医療技術だけでなく、それ以外の総合的な文明レベルが反映する。
⑨一人当たりGDPと平均寿命は相関関係にある。
⑩寿命のジニ係数は平均寿命の延びに並行して縮小している(平等になった)。
⑪エンゲルスの「需要飽和の法則」は食料だけでなく、あらゆるモノに適用できる。
⑫ミル「人間の最善は、誰も貧しくなく豊かになろうとしない状態」である
⑭経済成長が必要かどうかは、いまの平均寿命を受け入れるかどうかと同じ。
⑮現在の日本は、資金を借りて投資すべき企業の内部留保増加率が大きすぎる。

       太いお墓 H28.10.09

 吉川氏は、この本の最終章で、「経済成長が必要かどうか」という根源的な問題を論じている。巷では、経済成長は必ずしも良くないとする意見は多い。地球の限界を説くローマクラブの報告。経済学者には、江戸時代のような完結したリサイクル社会を理想としている人もいる。

 一方でトーマス・ホッブスは、「自然状態の人間は、劣悪・凶悪・短命」と言う。5000人も亡くなった伊勢湾台風は、技術進歩で予知・予防できるようになった。江戸時代の遺骨を調べると、庶民は栄養不足とストレスの中で生きていたことが分かった。
 じつは経済発展は、人間の「寿命の延長」に貢献してきたのである。

 したがって、経済成長が必要かどうかは、80歳を超える現代の平均寿命をどう考えるかによる。生物学的には40歳とされる寿命を、大幅に超え限界に近づいている。社会の活性から言って、これ以上の長寿がいいとは思えない。今後は「健康寿命」など質の向上に向かうだけである。
 それでも、そのための成長は必要である。成長しなければ、いま10年もある不健康寿命を減らすことができない。そして成長にはイノベーションがつきものである。


 ここで問題になるのは、日本ではイノベーションの中核を担うべき企業が、内部留保を溜めこんでいることである。これでは停滞しか起きない。将来に向けて投資し、成長を目指さなければ衰退するしかない。社会は不健康になるだけである。

 ではどうするか。
 国が直接投資し、イノベーションを起こす。高リスクなメタンハイトレード高速増殖炉など、エネルギー分野は喫緊の課題である。お金なら、無尽蔵に眠っている。いま国が課題に向かって大きな投資をしなければ、ますます不健康な人が増える。未来は悲惨である。
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