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柔道に情けは無用

 相手の弱い所に自分の強い所をぶつけてこそ本当の勝負師

 リオ5輪の代表選考会を兼ねた全日本女子柔道選手権で、山部選手が優勝し、78K超級の代表に選ばれた。この試合では、優勝候補の田知本選手が左ひざを負傷し、山部選手はそれに付け込んだ形となった。思い切り左ひざを蹴りに行っているし、相手が崩れたのをみてすかさず押し倒している。勝利が決まったとも、負傷した相手を気遣う様子は見せなかった。

 これに対し思い出すのは、男子柔道の山下泰裕選手が金メダルを獲得した1984年ロサンゼルス5輪の決勝である。2回戦で右足ふくらはぎに肉離れを起こした山下選手に対し、対戦相手のエジプトラシュワン選手は、直接山下の右足を狙わなかったことから、フェアプレーの精神を称えられた。

 単純にこの2つを比べると、如何にも今回の山部選手は、人の弱みに付け込んだずるい勝ち方をしたように見える。また無理やり押し倒したため、相手のけががひどくなったようにも思える。どうせ勝つのだから、もっと負傷した相手を気遣うふりをしたほうがよかったのではないか。口には出さずとも、試合を見ていた多くの人は、山部選手に対し良い感じは持たなかったはずである。


 しかし柔道は、その普通の感覚とは違うのだという。
 ロス5輪のとき山下選手は、「ケガした右足を気遣って、右の技をかけなかったというのは事実ではない」「右払い腰を仕掛けようとした時、ラシュワンは右足に技を仕掛けている」「相手の弱い所に自分の強い所をぶつけてこそ本当の勝負師。自分も、得意技が相手が痛めた所を攻めるような技であれば、遠慮なくそこを攻める」と語っている。
 それゆえ柔道は、他のスポーツとは一線を画しているのかもしれない。
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