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ウォシュレットの開発

 日本では圧倒的な商品も、世界のシェアを確保するには厳しい戦いが続く

 技術開発の経営は、つぎの段階で進むということを以前書いたことがある。

 研究 (要素技術、基礎研究)
  ↓       ・・・・・・・魔の川 
 開発 (製品化)
  ↓       ・・・・・・・死の谷
 事業化 (商品化)
  ↓       ・・・・・・・ダーウィンの海
 産業化 (市場をつくる)

 たとえば、
 いま日本にはウォシュレットが4000万台、家庭の70%に普及している。
こ の便器は1960年代にアメリカのビデ社が、痔の患者用に医療用弁座として開発したものである。1967年にTOTOがその権利を買い取ったのだが、水温が不安定で熱すぎたり冷たすぎたり、液の発射方向も不安定な、欠陥商品であった。

 そこで、社員を中心に大勢のモニターを集めて詳細なデータを取り、日本人に合うように改良に改良を重ねていく。まず水を当てる肛門の位置を決める。つぎに水の温度や勢い、角度、噴出量。これらは、周囲の気温や人によって感じ方はさまざまである。その組み合わせは無限にある。さらに、お尻を洗った温水でノズルが汚れないことも大切である。

 いやがる女子社員を無理やり便器に載せ、前後「2か所」の位置を計測する。これは究極の個人情報である。試行錯誤に苦労に苦労を重ね、1980年に温水洗浄装置つき便座「ウォシュレット」が販売された。

 およそここまでが「製品化」の段階である。つぎにこれを商品として事業化していかなければならない。

        弁天岩 H27.10.12

 最初は故障がつきものである。ウォシュレットの温度制御システムが故障し、温水が突然冷たい水に変わるというクレームがつき、返品の山ができたこともあった。

 すったもんだ何とか改良商品は完成したのだが、売れ行きが芳しくない。
 いまなら当たり前のウォシュレットでも、当時は胡散臭いと思われていた。最初産婦人科や肛門科の病院を中心に売り込みをかけていたが、どんな人も長年の習慣を変えるのは難しい。とくに、洗うところがところである。他人が洗った器具をそのまま使うのにも大きな抵抗がある。
 商品の宣伝をするにも、商品の性質上、雑誌と新聞社からはイメージダウンになると言って、掲載を拒否されていた。

 あの有名なキャッチコピー「お尻だって洗って欲しい」のテレビCMのときも、「飯を食っている時間に、便器の宣伝とは何ごとだ!」という激しい抗議の電話が殺到したという。
 それでも、(自信と誇りを持って)粘り強く販促活動を続けた結果、現在の実績がある。

 現時点では、事業化の段階から産業化の段階にまで進んでいる。
 ただ、海外では厳しい価格競争に晒されている。中国では同じような機能の製品が、日本円で1万円くらいで買えるという。日本旅行へ行って便利さに目覚めた中国人を対象に、中国メーカーが売り上げを伸ばしているという。

 日本では圧倒的な商品でも、世界の産業でシェアを確保するには、まだ厳しい戦いが続く。今後どのような利便性を追求していけるのか。臭いや清潔感、浣腸機能や心地よさなど、追求すべき課題は多い。
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