FC2ブログ
RSS

ファスト&スロー(27年12月22日)

 人々は目に付きやすい印象・思考に流されやすく、それを修正するのは容易ではない

 ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」(上下2巻)を紹介する。(長文)
 ダニエル・カーネマンは、「心理学研究の洞察、とくに不確実性下の人間の判断と意思決定に関する研究を、経済学に統合したこと」によって、2002年にノーベル経済学賞を受賞した、行動経済学者である。

 この本では、意思決定に関して陥りやすい罠について、日常のことから政治、経済、経営の意思決定まで、あらゆる面から述べられている。人の不可解さを実験データで証明しており、納得することが多い。人の行動を心理面から分析するものである

 ただ日本語訳では、なじみのない言葉が多く、多くの事例が欧米の文化価値観で描かれているため、ややわかりづらかった。

 その内容の一部を示す。 七福神 勢ぞろい

①思考モードには「システム1」=直感と「システム2」=知的活動がある
②システム2=知的活動は怠けものである
③システム2は休息すればよく働く(昼休み後の上司の許可は得やすい)
③システム1にはプライム(先行刺激)が入りやすい(プライミング効果)
⑤認知容易なもの、繰り返しがシステム1に入りやすい
⑥人間には、統計的な推論をすべき状況で、因果関係を不適切に当てはめようとする傾向がある
⑦多くはプライムデータで、もっともらしいストーリーをつくり信じ込む
⑧TVをよく見る人は、政治に詳しくTVをみない人の3倍影響されやすい
⑨好き嫌いによって判断が決まってしまう(感情ヒューリステック)
⑩小さすぎるサンプルでは、仮設の実証に失敗するリスクは大きい。(例)小さな学校ほど成績が良い(悪い)
⑪意味のない数字でも最初にあると、その後の判断に影響する=アンカリング効果(係留効果)
⑫目立つ事象は記憶から呼び出しやすく、直感を補強する
⑬感情は、受け取るメッセージの頻度、感情に訴える強さによって歪められる
⑭専門家にとって確率は、基準率をアンカーに、信じ込んでいる度合いを表したもの
⑮「もっともらしさ」は、「起こりやすさ(確率)」ではない。
⑯ほんとらしさの確率(ベイズ・ルール)を重視
⑰平均への回帰・・たまたまよかっただけ
⑱直感は極端に偏った予測を立てやすい  回帰は難しい
⑲ビジネス書は経営手法が業績に及ぼす影響を誇張しており役に立たない・・後知恵
⑳世界は予測不能で予測エラーは避けられないし、自信は予測精度を保証しない

      湯布院
                    
㉑複雑な情報を取りまとめて判断しようとすると一貫性を欠く  
㉒チェス、将棋、スポーツ、消火作業など、人が認識できる範囲の訓練は可能
㉓一般に計画はベストケースのシナリオに非現実的なほど近い
㉔楽観バイアスが大きなリスクをとる・・資本主義の原動力
㉕効用は「参照点」からの変化に左右される。年収100万円の人と1億円の人では、10万円の効用は異なる
㉖悪い選択肢しかないとき人々はリスク追求型になる。損失回避
㉗プレスペクト理論の要は、参照点が存在すること、損失は同等の利得より強く感じられること    
㉘動物には悪いニュースを優先的に処理するメカニズムが組み込まれている
㉙不安の度合いは危険の発生確率には一致しない。
㉚めったにない出来事は、分母の無視による過大評価しやすい
㉛リスクを伴う選択はその都度決めるより、リスクポリシーを決め適用する   
㉜行動して悪い結果になったほうが行動しなくて悪くなったときより後悔は大きい
㉝単独評価と並列評価は一致しない時がある。フレームを広げる
㉞客観的にまったく同じ2つの結果の選考は、記述の仕方によって逆転する
  過去の経緯(サンクコスト)は判断とは無関係で、考えるべきは目の前の選択のみ
㉟記憶の評価はピーク時と終了時の苦痛の平均で決まる。ピーク・エンドの法則
㊱私たちは物語や記憶で経験を評価する。人生は、エンディングがすべてを決める
㊲感情の状態(気分いい、悪い)は、そのとき何に注意を向けているかで概ね決まる
㊳あることを考えているとき、人生でそのこと以上に重要なことはない(焦点錯覚)
  
          ブタ        

 一つ一つに深い意味がある。それでもたくさんの項目が並ぶと、わけが分からない。
 簡単に言えば、「人々は目に付きやすい印象・思考に流されやすく、それを修正するのは容易ではない」ということである。たとえば多くの人々は、一部の間違った直感にもとづいて主張するメディアに感化され、自分自身で意思決定をすることができない。つまり巷に言われる「民意」など、ほんとの民意ではないのである。
スポンサーサイト



トラックバック
トラックバック送信先 :