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他国のご機嫌より自国民(27年9月7日)

 国民や従業員の気持を慮らない組織は、真のサービスを提供することができないブラックである
 
 半藤一利氏と保坂正康氏の対談集「日中韓を振り回すナショナリズムの正体」を読んだ。二人とも、現在の政権に批判的である。そうかといって、いわゆる社民党的お花畑論者でもない。ウヨク、サヨクいずれに対しても距離を置いている。
 半藤氏がこの本を書いたのは、「自分の民族を最高位と考えて他国に押し付けようとする悪いナショナリズム」に危機感を覚えたからだという。その点では保坂氏と思いは同じである。つまり彼らは、「今の権力者は、国民のナショナリズムを煽り、国家に奉仕させようとしている」と思い込んでいる。

 しかし、この本を読み進めると、彼らこそが自分の思い込みを強引に押し付けようとしているのではないかと感じてきた。二人とも高齢で、自分こそ現代史の権威であるとの自負があるだけに、頭が固い。
 
 そもそも今の日本に、ほんとの権力者なるものがいるのであろうか。安倍首相がそうだというのなら、大きな間違いである。彼は国民のナショナリズムを煽るどころか、沈静化に躍起になっている。最近は靖国にも行っていない。あんな生ぬるい安保法案成立でさえ、通すのに汲々としている。いま最高の権力者というのは、大手新聞TVを抱えているマスコミではないのか。

 また半藤氏は、日本国民が歴史の事実を解明し、冤罪による不名誉を解消しようとするのにも否定的である。たとえば南京虐殺30万人という指摘に、一部保守派が「そんなにいるわけがない」と騒ぐのはもってのほかだという。これは、ドイツがユダヤ人800万人を殺したという人に対し、「いや300万人だ」というのと同じ、国際社会から轟々と非難される。問題の本質は殺された人の数ではないという。

 しかし、なにごとも「ご無理ごもっとも」で頭を下げろというのであろうか。いくらなんでも30万人はおかしいし、南京虐殺などなかった可能性もある。バナナたたき売りのごとく、無制限に人数を膨らませて脅迫するのは、当たり屋の恐喝そのものである。

 また、日本はかって中国に対しては21か条の要求、韓国に対しては日韓併合条約などを行った。いずれも一方的に日本が有利な条約であり、ひどいことをしたという。
 だが、国と国との交渉においては、ダメもとで最初吹っかけるのではないか。交渉の中でお互い引いていく。だから、日本が一方的に有利な条約を結んだからといって、相手に非難されるいわれはない。非難すべきなのは、不利な条約を飲んでしまった、当時の中国や韓国である。そもそも、すべての条約や講和は不平等である(小室直樹氏)。
 日本とアメリカの交渉においても、繊維から始まり半導体や自動車部品、さらには為替操作やいまのTPPに至るまで、日本はやられっぱなしである。幕末の不平等条約もそうである。日本では、これらの条約について、ときの政権のだらしなさ、交渉力の弱さを責めることはあっても、相手を非難することなどない。

 日本は平和憲法のもと、これまで戦争という選択肢を捨てたことが、国際的な評価を得ているというのも、一方的な思い込みである。国際社会の本音は、ひたすら金で済ませようとしている日本を、バカにしているだけである。日本の不利益は、他国の利益である。低姿勢で金だけ出している都合のいい日本を、表向き評価するのは当たり前である。


 すなわち半藤氏と保坂氏は、ひたすら国際社会とくに中韓の目を気にして、相手にだけ気に入られようとしている。日本にはこんな人が多い。企業でいえば、「顧客満足」に熱心なあまり、従業員を蔑(ないがしろ)にするブラック企業そのものである。ほんとは企業であろうと国であろうと、まず内なる構成員の気持ちを真っ先に大切にしなければならないはずである。

 国民や従業員の気持を慮らない組織は、お客様や外国に対して、心からのサービスを提供することができない。結果的にその組織は成り立たない。いやその前に、内部から崩壊する。
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