FC2ブログ

検査至上主義が破滅を招く②

 欠陥を考えず、すべて検査で解決できると勘違いするからおかしくなる ①の続き

 ものづくりにおける検査について考えてみよう。
 たとえば(A)のように、100個の製品の中に、20個の不良があったとしよう(新しい製品をつくる場合、これくらいの不良発生は珍しくない)。検査の場で20個の不良を正確に見つける人は少ない。できるのは、検査の神様だけである。

 実際には、良品なのに不良とされる「偽不良」と、不良品なのに良品とされる「偽良品」が、必ず混在する。

     検査の実際

 良品なのに不良とされる「偽不良」の発生は、不良を絶対に出さないよう慎重に検査する場合(B)に起こりやすい。その場合、不良品を市場に出してしまう可能性は低い。だが、見かけの不良発生数が多くなって、その分利益を直撃する。
 なにしろ不良廃棄品は、原材料の仕入れから出荷までかけたコストをまったく売り上げに計上できないのである。(B)のように、「偽不良」が20個もあると、予定した売上高が40%も減少する。これでやっていける企業は少ない。

 そこで、目先の利益を重視する経営者は、検査を緩くして、できるだけ不良発生数を減らそうとする。その分見かけの不良数は、たとえば10個に減少する(C)。だが、減った分の10個は良品に紛れ込んで、市場に出荷されてしまう。市場での不良率は10/90=11%にもなって、会社の評判はがた落ちになる。



 (B)と(C)、どちらも困る。だから検査の精度を、できるだけ(A)に近づけようと努力する。神様ではないのだから、完璧にはできない。例えば(D)のようになる。本物の不良が15個で偽不良が10個、併せて25個を不良品とみなして廃棄。良品として出荷した75個のうち、5個不良品が混じる。
 まだ面白くないが、すったもんだしても、やっていかなければ、飯の食いあげになる。
 ここから検査技術を磨いて、(A)の状態に近づけると同時に、不良発生を抑えていくのである。

                学問の勧め 松平春嶽

 いまの新型コロナウィルス検出のPCR検査は、(D)のようなものである。PCR検査では、偽不良品(偽陽性)はもっと少ないかもしれない。だが偽良品(偽陰性)はこの何倍もある。これでは検査の意味をなさない。

 つまりPCR検査は、単に陽性の人(不良品)を絞り込むための検査なのである。検査の欠陥を考慮せず、検査で感染の有無を判定できると勘違いするからおかしくなる。さらに、もともとウィルス検査は、いい加減なものと思ったほうがいい。なにしろ、人体に1000兆個も住みついているウィルスや細菌の中の、たった一つを見つけ出すのである。


 そしてじつは、検査にはものすごい落とし穴がある。
 ③へつづく 
スポンサーサイト



検査至上主義が破滅を招く①

 感染者の確定や安心ための検査なら、10億件やってもムダである

 ようやくマスコミなどで、新型コロナ感染の検査拡大を叫ばなくなった。一部の無能マスコミを除いて、PCR検査の弊害について理解が深まってきた。いまだに、検査!検査!と叫んでいる人たち(なぜかTBS系が多い)を見ると、つくづく「バカは死ななきゃ治らない」と思う

 WHO事務局長が「検査、検査、検査」と言い始めたのは、明らかに魂胆がある。
 すなわち、中国の検査キット権益がらみである。車検や健診など、むかしから検査には必ず利権がつきものである。日本の検査機関は天下りの巣窟となった。中国が検査で儲けるのは、まさにマッチポンプである。

 いま、世界中が検査拡大に走っているのは、とりあえず治療薬がない感染症に対し、検査でしか儲けられないからである。さらにつぎのワクチン利権も、マッチポンプ中国が狙っている(日本は医薬品開発には弱い。欧米や中国は、人種差別によっていくらでも治験者が得られるからだ)。

                天狗

 そもそも、日本の検査数は決して少なくない。おそらく韓国の100倍は行っている。毎日個人が自己診断しているし、病院へ行っても必ず問診する。レントゲンやCTスキャンもある。
 少ないのは、いい加減なPCR検査数だけである。

 それにこれまで、日本でPCR検査数が少なかったのは、感染者が少ないからである。日本の20倍も検査している韓国に比べても、PCR検査に対する陽性率は変わらない。日本は絞りに絞っても3%(対検査人数では5.5%)、地域によっては数百件検査しても陽性ゼロである。やりすぎ韓国も3%程度。ちなみにアメリカは10%。イタリアに至っては、陽性率20%もある。

 だから日本でも、これから感染者が増えれば、検査数も増える。どうせ全数できないのなら、統計学の確率論をもとに進めていけばいい。
 統計サンプルなら、無作為抽出で1000件あれば充分である。感染者を確定するため、あるいは安心のための検査なら、10億件やってもムダである(強欲者が毎晩床下の札束を数えるようなもの)。韓国でさえ累計で30万件しかない。
 日本は、お手本とされる台湾を見ながら、独自に進めていくべきである。
 
                親鸞

 このように、医療専門家でない私も、本ブログでウィルス検査の是非について、しつこく書いてきた。医療も、れっきとした「商品・サービス事業」経営の一部だからである。すべての事業の目的は、信頼できる商品・サービスを提供することに尽きる。
 その医療サービスの目的は何か。患者を増やさないこと、適切な治療を行うこと、最終的には死亡率を下げることである。
 「検査」は、その医療サービスの一手段に過ぎない。
 検査の目的と運用については、すべての商品・サービス、あるいは「ものづくり」も異なることはない。企業でもレベルの低いところほど、検査を重視する。

 いまやることは、医療体制を充実させること。防護服や人工呼吸器(日本は3000台?動けるのはその数分の一)の国内生産。検査の方法と精度を、大幅に改善することである。検査数が少なすぎるという邪悪な雑音に惑わされ、むやみにいまの検査数を増やすことでは絶対にない。



 もちろん検査の技術と運用は、組織の存続に大きく影響する。このことは、基本中の基本である。私自身が経営の現場で、直接ものづくりや管理にかかわり、そのことを実感してきた。

 次回②で、武漢ウィルスを離れ、ものづくりにおける検査について考えてみよう。

大掃除と整理整頓

 捨てることは「善」であるという意識を「MOTTAINAI」文化の日本で定着させるのは難しい

 今日は、仕事部屋の大掃除と工具類の整理整頓をした。余計なものがたくさんあるので、まったくはかどらない。この1~2年、「終活」のつもりでずいぶん捨てたつもりなのに、またわけのわからないものが、大量に溜まってきた。
 
 ものづくりに限らず、業務効率化の基本は、整理整頓である。モノや情報、時間、方法を有効活用する。そんなことわかっているはずなのに、きちんと整理・整頓ができている人や組織はほとんどない。人に説教する私自身すら、例外ではない。

 なぜできないか。そのことについて、本ブログで書いたことがある。つまり、整理整頓ができないのは、エントロピーの法則、「秩序あるものは必ず乱れる」という自然界の法則が働いているからである。
 じつはそれだけではない。
 自然界の法則に加え、心理的な制約もある。

                説教

 整理整頓するためには、まず「整理」できなければならない。それが難しいのである。
 なぜ、整理(捨てること)ができないのか。
 人は、「損失回避バイアス」を持っているからである。つまり利得の喜びより損失の痛みの方を感じやすい。たとえば、「コイン投げで、表なら1500円貰えるが、裏なら1000円払う」場合は、ほとんどの人は参加しない。

 すなわち「整理」すればなにかを失う。なにかしら痛みを感じる。ムダが減って利益をもたらすとわかっていても、最初に「損失回避バイアス」が作用してしまう。損失の痛みは確実に発生するが、最終的に利益をもたらすかどうかはわからない。だから「整理」するには、きわめて勇気が必要である。

                ポイ捨て禁止

 では、思い切った「整理」ができるためには、どうしたらいいか。
 「損失回避バイアス」において、たとえば先のコイン投げで貰える金額が2倍以上になると参加者が増える。宝くじのように、何十倍にもなるならもっと多くの人が参加する。つまり、「整理」のリターンの大きさを、きちんと認識すればいいのである。なにかを得るためには、まずなにかを失わなければならない。難しいところではある。

 もっとも、損失回避だけではない。捨てることは「善」であるという意識を、「MOTTAINAI」文化の日本で定着させるのは難しい。今日の大掃除では、30本あまりのドライバーが出てきた。もちろん、半分もいらない。これを直ちに捨てられるか?
 「整理・整頓」は、人類永遠のせめぎ合いである。

ものづくり技術の高度化

 自らの技術と工夫を凝らすことで、どのように高度化に貢献したかが問われる

 ものづくり補助金の採択が発表され、今回は全国で7468件採択された。こんどの採択倍率は約2倍と、かなり採択率が上がっている。いつもながら、この採択の結果はミステリーである。
 といっても、たいていは不採択者のひがみである。本質を追求していけば、いつか日の目を見る。8月には2次募集がはじまるらしい。

 ではどうすれば、採択確率を上げられるのであろうか。
 この制度で合否のカギとなる重要なキーワードは、「革新性」と「高度化」である。

 まず申請案件は、一定程度の革新性を有していなければならない。
 応募要項の表紙に、「本事業は、中小企業・小規模事業者などが取り組む、生産性向上に資する革新的なサービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善に必要な設備投資等を支援するもの」とある。また、審査のポイントである「審査項目」の最初に、本事業は「新製品・新技術・新サービスの革新的な開発となっているか」と書いてある。
 したがって、申請事業には何らかの革新性があることが最低要件である。区別するのは難しいが、単なる改善ではいけないようだ。

                これでいいか

 つぎに「ものづくり技術」で申請する場合には、革新性に加え「高度化」が要求される。
 これも「審査項目」の最初に、「(本事業は)特定ものづくり技術分野の高度化に資する取り組みであるか」と記載してある。不採択案件は、この「高度化」について、申請書でうまく説明できていないのではないか。
 どういうことか。

 いくつかの申請書を診ていると、自社独自の技術的な取り組みが抜けているのが多い。たとえば気合の入った申請書ほど、導入予定の最先端設備性能を、これでもかと詳細に記載してある。だが、いくらカタログにあるような、構造・仕様・性能や特徴を連綿と記入しても、あんまり意味がない(自社開発の場合は異なる)。その設備を作ったメーカーの「革新性」と「高度化」を説明するだけである。申請する人は、ただ補助金を貰って購入するにすぎない。

 したがって、補助金を受ける企業が「ものづくり技術の高度化に資する」ということは、自らの技術と工夫を凝らして設備性能を活かし、どれだけ高度化に貢献するのかが、問われるのである(そのように修正をアドバイスした申請書はたいてい採択された)。導入する予定の最新設備は、高度化手段の要素となるだけである。

 具体的に、どのような取り組みを行えばいいのか。まさにそのことが、それぞれの企業における独自性、ひいては革新性といえる。中小企業の生産現場に携わっている人なら、肌身で実感しているはずである。その現場のノウハウを、申請書に活かすのである。

                 エテコウ
 ただそれを文書化するのは難しい。
 じつはこれに関する虎の巻がある(教科書的なきれいごとの羅列であるが)。「中小企業の特定ものづくり基盤技術の高度化に関する指針」である。12分野の関連する分野の事項をじっくり読めば、いくつかヒントがつかめるはずだ。そこには、審査員が納得できるような文章も記載してある。

顧客情報のスピード

 いくら工場が合理化しても、流通段階でぶち壊せば元の木阿弥である

 これまでのものづくは、必ず流通段階でのロスが発生していた。
 たとえば、眼鏡枠製造業者が眼鏡をつくるのは、たいてい問屋からの注文による。その問屋が発注するのは、小売店からの受注に応じた売り上げ見込みによる。さらに小売店は、各店主の思惑で、売れそうなメガネを問屋に発注する。受注生産と言ってもこの程度である。

 すなわち、製造業者に入る情報は、流通の各段階での予測に過ぎない。実際にお客が何を買うのかは、売れてみなければわからない。したがって、必ず流通段階では在庫が残る。売れ筋の商品でも、色やサイズによって残る場合がある。小売店からメーカーに至るまで、その在庫の押し付け合いを行っているのが現状である。

              在庫切れ休業 H30.2.10

 では、その流通在庫をつくらないために、どうすればいいのか。
 理想的なのは、お客が注文したものをその場で作って提供する。これで製品在庫は無くなる。飲食店と同じで、お客が訪れた店舗内で「一人屋台方式」を貫けば、在庫レスが実現できる。

 眼鏡枠の場合、さすがにいまの段階では、小売店で完成品までつくるのは難しい(待ち時間がかかりすぎる)。そこで、小売店でお客にフィッティングし、その情報を工場に送る。工場ではそのデータに基づいて眼鏡枠をつくる。1枚づつつくるから、ロット待ちが無くなり、1週間も経たずにオンリーワン商品ができる。レンズ加工するのと同じ期間なら、お客にとっての待ち時間は変わらない。
 じつは最近、このやり方を取り入れようとする眼鏡メーカーが現われた。眼鏡のように度数を合わせないアクセサリーのような商品なら、小売店にいかなくてもいい。




 同じことは、どの業界でも当てはまる。
 たとえば建築資材をつくる会社なら、なにをつくるかが決まるのは、施主の依頼を受けて建築設計者が具体的な仕様を決定した瞬間である。
 これらの情報は、設計者→工務店→建築資材業者→商社→メーカーと何段階も経て、ようやくものづくりのメーカーにたどり着く。したがって、具体的な仕様が決まってからメーカーに情報が到達するまで、約1か月かかる。メーカーはそこから製品をつくり始める。原材料を発注している時間はないので、見込みで在庫しておく。当然使わない材料が発生するし、見込みで作ってしまえば、こんどは使わない製品在庫が溜まる。
 
 この建築材料の場合でも、工務店などで設計者が仕様を決定した瞬間、その情報がメーカーに届くようにすれば、メーカーはその時点で原材料を発注できる。材料のムダが無くなるし、圧倒的な短納期で納めることができる。
 ITだIOTだと言っている時代、こんな簡単なことができないはずはない。いち早くこの仕組みを取り入れた企業は、5年間くらい大儲けできる。

                ネズミだ

 以上は中小企業の話である。
 大企業ばかりの自動車メーカーは、その膨大な情報ネットワークをもとに、もっとうまくやっているはずであった。
 ところが、先日トヨタの新車を購入したとき、購入決定から納品まで2週間もかかった。トヨタ工場では、組み立て開始から完成車ができるまでのリードタイムは数時間のはずである。なぜ納車に2週間もかかるのか。
 営業担当に聞くと、カーナビ、ドライブレコーダー、ETC、コーティングなどの手配や取り付け、それに事務処理に要する時間らしい。これでは、いくら工場で合理化しても、元の木阿弥である。世のなかは矛盾に満ちている。

金型の保管負担

 金型メーカーは倉庫業を開業すれば、堂々と保管料を頂くことができる

≪大手メーカーから製造を委託されている下請け企業の8割超で金型の保管費用を不当に負担させられているなど、下請法違反の恐れがある不適切な商慣習が横行していることが18日、政府の調査で分かった。5月18日 共同通信記事より≫
 
 相手が大手メーカーでなくても、金型や専用治具を使って部品を生産している工場は、その保管に悩んでいる。毎月新しい型を10台使う小さなところでも、年間120台。10年経てば、1200台になる。それに付帯する治工具、なかには20年以上前のものもあり、そうなると収拾がつかない。置くスペースはもちろん、劣化防止処置やなんといっても、管理工数がバカにならない。
 金型置場がどんどん膨らんで、地震でもあったら目も当てられない。文字通り金型で会社がつぶれる。

              敦賀赤レンガ倉庫 H29.1.07

 したがって5年、せめて10年過ぎた金型は、発注元に引き取ってもらうか、廃棄すべきである。ただ、なかなか相手方がうんと言わないから困る。大きい会社になるほど、担当者の一存では処分できない。いつ同じ仕事が入るかわからないからだ。だから、5Sでいちばん難しいのは、「整理」つまり捨てることだと言われる。

 一番いいのは、一定期間過ぎたら保管料を貰うことである。年間1~3万円程度か。1000型保管していたら、それだけで3000万円。場所や保管費用を入れたら妥当なところである。
 それでも相手は出し渋る。
 それなら金型メーカーは、会社の定款を改訂し、倉庫業を立ち上げればいい。倉庫業なら堂々と保管料を頂くことができる。煩わしい保管も本腰を入れてでき、全体の生産性も上がる。これくらいのことができるかどうかで、会社の運命は決まるのである。

ものづくり現場の格言

 いきなりこんな言葉を発せられても、受けた人は面食らう

 工場の現場では、ムダ取りの格言を使っているところがある。大野耐一氏や山田日登志氏など、トヨタ生産に係る人たちのものが多い。その言葉はものづくりの現場では、水戸黄門の印籠と同じように重い。
 どんなものがあるか。思いついたものを並べてみよう。

・目的・目標があってムダが見える
・現場でやれたことが改善(案ではダメ)
・改善に金をつかうな、頭を使え
・自分で見たものしか信じない
・悪い情報ほど早く知らせろ
・考えるだけでは寝ているのと同じ昼行燈(閃いてなんぼ)
・1日10分はヨコの仕事を学ぼう(多能工)
・工場は狭く、オフィスは広く
・入口と出口を診ろ(U字ライン)
・現場は定時管理と定点管理
                オーム返し
・モノは溜めるな、流れでつくれ
・モノの置き場所はないほうがいい
・モノはできるだけ積むな、置くな
・仕掛品は不良の溜まり場
・機会損失で潰れた会社はない(つくりすぎで潰れる)
・赤字会社は心が赤い(すべて他人のせいにする)
・聞いたことは忘れる、見たことは覚える
・万能機より汎用機
・ネジを見たら親の敵と思え
・機械は遊ばせても人は遊ばせるな

 解説なしに、いきなりこんな言葉を発せられても、受けた人は面食らう。
 私がむかし工場責任者だったとき、機械1台で仕事していた女性工員に対し、立ち作業で2台持ちするよう、上の最後の「格言」を使って指示したことがあった。そのとき、お局さんの彼女からは、「(人をこき使う)鬼のような管理者だ」と睨まれ、現場から総スカンを食ったのを覚えている。いま動いている人に、変化を指示するのは難しい。

まんぷくラーメンの開発

 ラーメン以外の製品やそこまで行かなかった死体が海底に積み重なっている

 NHK朝ドラ「まんぷく」の後半は、インスタントラーメンの開発である。
 まず長谷川博己氏演じる立花萬平が、インスタントラーメンを思いつき、試行錯誤を加えて製品化に成功、デザインや販促方法を考えて商品化し、その後事業化に成功。一大産業として確立するまでを描いている。

 その立花萬平が、インスタントラーメンの事業を成功させるまでの苦労はすべて、製品開発が直面する障壁、溝である。そのことを、「魔の川」、「死の谷」、「ダーィウンの海」と呼ぶこともある。TVでは、その各段階における苦労や紆余曲折を描くことで、ドラマチックな仕立てになっている。
 それぞれの段階における障壁について説明しよう。 

【魔の川】
 この溝は、研究ステージと開発ステージの間に位置する。
 研究ステージから、新たな技術シーズを見つけ、ターゲット製品を絞りこむことである。この段階で、柔軟な発想で「戦略」を立て、どのような製品を作っていくのかが問題である。

 ドラマでは、立花萬平がインスタントラーメン「のようなもの」を作ろうと決心するまでの葛藤と、その後の開発段階での試行錯誤の連続をみごとに描き出している。満足いく製品ができるまでには、無数の失敗と、立ち止まって学習する数多くの局面があった。その踊り場を乗り越えて、ようやく自分たちが満足できるラーメンが完成する。

              三途の川

【死の谷】
 この溝は、開発ステージと事業化ステージの間に位置する。
 開発ステージでできた製品を、つぎの事業化ステージで、商品として完成させ、販売できるようにしていく。企業内部で「人・モノ・金」を調整して効率よく価値を生み出し、どのように顧客に販売するかの「戦術」が必要である。

 自分では完成したと思っていたインスタントラーメンも、そのままではなかなか売れない。売り方・アピール方法を工夫したり、TVのスポット広告を打ったりしていた。
 ドラマでは、1週間くらいで爆発的に売れるようになったが、現実はそんな簡単ではない。すぐ売れるようになったのは、現在と異なりあまり競合品がないことや、人々が新しい商品に飢えていたからであろう。いまはそんな簡単には売れない。ふつうは、ここで挫折する。

【ダーウィンの海】
 この溝は、事業化ステージと産業化ステージの間に位置する。
 事業化ステージでは、事業を行う経営体制が必要になる。つぎの産業化ステージでは、新市場の開拓や市場での優位性を保つことで競争に勝ち抜くことが必要である。この『ダーウィンの海』には、うようよ魑魅魍魎がさまよっており、新規性や珍しさだけでは越えられない。

 ドラマでは、あっという間に競合製品が現れ不良品が出回って、イメージの低下と、売上ダウンに見舞われた。特許だけでは類似品の出現は避けられないし、いったん人々に認知されれば、世の中には無数のアイデアが生まれる。その中で、つぎつぎと自社商品のレベルアップをはかっていかねばならない。味のバリエーションや包装方法、食べ方の変化である。
 最後に、ラーメン業界として同業者をまとめ、インスタントラーメンを一大産業にまで育て上げている。その紆余曲折が人間ドラマである。


 一つの商品が事業化され、産業として世の中の一部を占めるようになることはきわめてまれである。インスタントラーメン以外の製品、製品にもなれなかった技術の屍が、世界中の海底に、累々と積み重なっているのである。

地方企業の人手不足対策(生産性向上)

世の中にはびこっているムダをなくせば、20%くらいは生産性が向上する

 都道府県ランキングで、福井の優位性を示す指標の一つに、「完全失業率」がある。総務省の労働力調査によると、2018年7~9月平均で、福井県は1.4%と3番目を示している(トップは三重県と石川県の1.3%)。ここまで低いと、完全に人手不足状態である。

 ではどうしたらいいか。
 まず、比較的失業率の高い(東京・大阪は3%近い)都会の人たちを地方に分散させるという案がある。国の政策で彼らには、数百万円の補助金を支給するという。
 だが都会で失業率が高いのは、地方の人が都会へ、いい仕事を探しに行くからだ。都会でも、ほんとにあぶれている人は少ない。安い仕事ならいくらでもある。手続きの面倒な補助金を使ってまで、賃金の安い地方に来る人は限られる。

 また(2月5日)に書いたように、有り余っている高齢者を有効活用するのもいい。
 それでも高齢者は、ある程度いざというときのため「じじいの決死隊」して温存しておく必要がある。それに、小手先を繕うだけでは根本的解決にはならない。

 したがって、人手不足解消の本家本元は、生産性を向上させる「少人化」でなければならない。「生産性向上」である。世の中に生産性の高い会社が残れば、必然的に人手不足は解消される。賃金も上昇する。
 その「生産性向上」を促すのが、プレッシャーである。ある程度のストレスがなければ、人は考えることを怠り、安楽に流れる。安易に外人労働者に頼るのは愚の骨頂である。

              さばえものづくり2018 H30.10.27

 そのストレスのひとつが、企業における外注工程の「内製化」である。
 工程を外部に発注する理由は、①自社内で行うより外注の方が低コスト、②技術的に自社ではできない、③工程能力不足(人手不足)でできない、などである。

 このなかで、「①外注の方が低コスト」には問題があることが多い。
 もし、外注先の低コストが人件費の違いだけなら、外注先の企業はますます低賃金の社員ばかりになる。それではまわりまわって、自分の首を絞める。
 そのうえ外注を行うときは、直接の支払い以外に、つぎのような見えないコストが発生している。

①払い出し、受け入れコスト
 数量・品質チェック、梱包、伝票作成など、払い出しと受入時には、相当な手間とコストを要する。
②配送コスト
 運搬のための荷役車両やスペース、積み下ろし人員の確保を含めた運搬コストがかかる。
③生産リードタイムが長くなる
 払い出し前と受け入れ時には、運搬のために仕掛品が溜まる。仕掛品の量は生産リードタイムに比例する。
④管理、コミュニュケーションコスト
 担当者を決め、頻繁に外注先とのコミュニュケーションをとる必要がある。
⑤不良発生コスト
 外注先を含めた仕掛品が増えていくと品質異常の発見が遅れ、不良対策に大きなコストが発生する。さらに一般には、取引する段階が増えるほど、過剰品質に陥り歩留まりが激減する。
⑥ヌシの増殖
 外部との調整を一括して人っている外注担当者は、大ヌシの尊になることが多い。
 それでなくても外注担当者は、外注が内作に代われば、自らの権威を示す場が無くなる。だから必死に抵抗する。
⑦ナマケモノの増殖
 工場内の作業者も、余計な仕事を増やしたくない。経営者といえども同じである。だから、いったん外注に出した仕事は、いつまでも続く。変えたくない、変わりたくないのである。


 現実に多かれ少なかれ、多くの工場でこのようなムダが発生している。
 思い切って内製化し、世の中にはびこっているこのコストをなくせば、全体の2%くらい生産性は向上する。その一つの手法がM&Aである。どの程度の規模が適正か、試行錯誤で決めるしかない。

整理整頓は永遠か

 エジソンの机はみごとに片付いていた、アインシュタイン机の雑駁ぶりもみごと

 雑誌「THE21」5月号で、特集「生産性2倍の整理術」が掲載され、整理整頓の専門家がそれぞれの見解を述べていた。製造現場というより、おもに事務所や机周りの整理・整頓である。仕事ができる人のデスクはきれいに整理・整頓されているという「神話」があり、多くの人はそれを信じている。

 クラタ-・コンサルタントの山下氏は、「断・捨・離」、すなわち、入りを断つと同時に、不要なものを捨てることで、モノへの執着から離れることだという。まず明らかに不要なゴミやガラクタ、つぎに今の自分にとって不要なもの、最後に「不要、不適、不快」を基準に捨てる。いまあるもののうち、8割は捨てるべきという。そうすれば管理の手間が無くなる。

 清水章弘氏(プラスティ社長)は、身の回りの筆箱やカバン、机などを小さくすることで、整理・整頓を実践しているという。また紙の資料は、すべてスキャンして捨てることを原則としている。

 脳内博士の加藤俊徳氏は、整理整頓が苦手な人は空間や図形など視覚情報を理解する力が乏しく、散らかっていることを認識できないのだという。またものごとを俯瞰する力が弱く、どこから手を付けるか混乱し、脳がフリーズしてしまうそうだ。対策には、まず1箇所を集中して片づける。それを繰り返すことで、片づけ脳を強化することを提案している。

 事務効率化コンサルタントのオダギリ展子氏は、整理・整頓の3原則、①不要なものは捨てる、②カテゴリーごとに分類する、③使ったら元の場所に戻す、と王道を述べていた。コツは、案件ごとの「小片づけ」を行うことだという。

 これ以外にも多くの人が、それぞれの体験にもとづいた整理・整頓のノウハウを披露していた。
 整理整頓で難しいのは、まさに「整理」すなわち、捨てることである。この雑誌でも、ほぼ全員が共通して述べていることは、捨てることの重要さであった。

 たとえば私の仕事部屋には、20年来の顧客資料があちこちにどっさり重なっている。秘密資料(ほんとはどうでもいい)が含まれており、捨てるに捨てられない。会計資料でなくとも、企業名がそのまま書いてあり、捨てたらまずい。診断士協会あたりで、資料焼却のための、どんど焼きかキャンプファイヤーでもやってもらえると助かる。

              泥まみれの大根 H28.11.20

 歴史上の「仕事のできる」偉人はどうか。
 まずエジソンの机の上は、みごとに片付いていた。当時「整理・整頓」という言葉があったかどうかわからないが、これだけきれいに片付けていたから、つぎつぎと発明ができたのかもしれない。

 一方、アインシュタインの机の上の写真をみた。これはひどかった。まるで整理整頓とは無縁である。ありとあらゆる書類が、机の上や周辺に雑然と散らばっている。みごとな散乱ぶりであった。スティーブ・ジョブズもである
 整然としていたらもっといい仕事ができたのか、あるいはあの散らばり具合が彼らの「整頓」であって、あれだけの偉業がなされたのか。よくわからない。
 どちらにしても、私には無縁である。

生産性とはなにか(スキルアップ研修)

 福井の診断士協会が、県外診断士のスキルアップの機会を提供している

 昨晩、生産性向上についての講習『生産性ってなに?事例にみる生産性向上のヒント』を聴いた。講師はエトエワークス診断士事務所の米田大作氏である。

 最近、頻繁に生産性向上という言葉を聞くようになった。人手不足や働き方改革などが影響している。この生産性向上とはいったい何で、どのような状況になれば生産性が向上したといえるのか。 
 本ブログでも紹介したが、生産性向上には概ね2つの方向性がある。ひとつは、生産活動の合理化を進め、効率的な作業を行うこと。もう一つは、売値を上げることである。明確な垣根はない。

 今回の講習は、多くの業種・業界を経験してきた講師である。いろんなエッセンスが凝縮された生産性に関するノウハウを期待していた。

 講演内容は以下のようなものであった。
①生産性向上の背景に、日本の高齢化と生産年齢人口の減少がある
②社員意識として、残業が少なく趣味に時間が使えるのを好む割合が増加
③残業時間の公表など、社会では時短が義務づけられる
④製造業よりサービス業における生産性の格差が大きい
⑤生産性とは、付加価値/投入量
⑥生産性を上げるための計算法及び具体例の説明
⑦具体例として自らが経験した、豚まん製造の最大効率化の計算

 2時間講習の内容で、店長としての成功体験事例とその抽象化、プレゼン法について、いくつか参考になることがあった。

                グリフィスと弟子 H30.11.18

 ただ米田講師は、3年前に診断士試験に合格したばかりである。そのせいか教科書的な説明に終始し、行間の深みが感じられない。自らの体験といっても自慢話が多く、事例問題も練れていない。講師として経験の浅さは否めない。彼だけではない。これまで3年、スキルアップ研修会の外部講師も、同じようなレベルであった。これではわれわれ福井の診断士協会が、県外診断士のスキルアップの機会を提供しているように思える。

 これくらいなら、わざわざ大阪から呼ばなくても、地元の診断士を活用したほうがいいのではないか。聴く方も遠慮なく突っ込めるから、はるかに「生産性」が高い。もっともいま、診断士協会にはお金が唸っており、遣い方に困っているのかもしれない。

                蓮如上人 H30.11.25

 この講演の日の午前中、我が家で「ほんこさん」の読経が行われた。僧侶が仏壇の前で、長々とお経を唱える。5分で終わるかと思ったら、20分以上もかかった。もちろん長くなったぶん、お布施に反映される。わけのわからない言葉の羅列を長々聞いているのは苦痛である。
 顧客に苦痛を与える時間が長いほどお布施が高い。これで生産性が高いと言えるのであろうか。

 すなわち「最高の生産性」とは、顧客が納得する最大価格販売し、しかも最大効率で、その製品やサービスを提供することである。

実習生の労働環境

 ものづくりの神髄は単純な仕事の組み合わせである。「高度技術」など覚えても役立たない

 天下の悪法である移民拡大政策が取沙汰され、野党やマスコミは劣悪環境の外国人実習制度の実例を探し出している。低賃金での長時間労働や、放射線の除染など悪環境での労働を取り上げ、「徴用工」の強制労働とダブらせている。野党やマスコミは、日本中いかにも悪徳企業ばかりのような印象を与えている。

 つい先日も、日立製作所のフィリピン人研修生が解雇されたことが問題となった。その理由は、(報道では)実習計画が認可されなかったからだという。電線を束ねたり、窓枠を運搬する単純な仕事ばかりだと訴える人がいたらしい。

            運搬取り置きのムダ

 しかしものづくりの神髄は、単純な仕事の組み合わせである。簡単そうな仕事も奥が深い。ものづくりを極めたことのない役人にはわからない。電線を束ねることが単純作業だとは思わないし、運搬に至っては多くの搬送事業者が専門性を競っている。
 いくら簡単な仕事でも、効率や専門性を極めることが研修である。そのことを教えているかどうかが問題である。むしろすぐ時代遅れになる「高度技術」など、いくら覚えても役に立たない。

 さらに現場労働が、「劣悪な」環境だとしたら、外国人だからではない。もともと日本人だろうが、その仕事に従事する人はその環境である。また国会議員やマスコミなど、高給取りからみたら格安賃金でも、地方の人にとっては貴重な現金収入である。


 そもそも、中小零細企業の労働者をそのような環境で働かせているのは、まぎれもないわれわれ消費者なのである。低価格で高品質のものを求め、そして潔癖症ときている。

 マスコミの責任も重い。 
 必要でない「除染」を強要し、さらにありもしない放射能の恐怖を植え付けることによって、作業者に過大なストレスを与えてしまっている。放射能被害の99%は、マスコミねつ造の恐怖によるストレスなのである。

台湾脱線事故の車両

 複雑なシステムには必ず何らかの欠陥がある。負の情報はどんどん出すべきである

 先月台湾で起きた脱線事故の車両は日本製だった。この車両をつくった日本車両製造は、車両の安全装置「自動列車防護装置」に設計ミスがあったと発表した。要求仕様では、運転士が装置を切ると管理する指令員に自動で伝わるはずだったのに、伝わらないようになっていたという。

 会社側は「事故原因は当局が調べているので、事故にかかわる話かどうかは何とも言えない」としている。車両の要求品質が満たされていなかったことは確かであろうし、そのことが今回の事故の遠因であったことは間違いない(もちろん100%の責任ではないが)。

              ブラックホール h30.4.21

 産業革命が起こって、まだ300年しか経っていない。たったそれだけの歴史で、人間ごときが100%完璧なものをつくれるとはとても思えない。いまあるどのような製品にも完璧はない。すべて確率の問題である。原発「被害者」の、安全神話に騙されたという言い訳は白々しい。
 ものごとは、失敗を繰り返して完成していくのである。

 したがって事故が起こったとき、メーカーや関係者は、このような負の情報をどんどん出すべきである。ものづくりにおいて絶対はありえない。とくにこのような複雑なシステムでは必ず何らかの欠陥がある。小出しにするようでは企業の誠意が疑われ、イメージの損壊につながる。
 裁判で、原発事故の責任を問われている元東電幹部の言い逃れこそ恥さらしである。

展示会のはしご

 展示会で一番勉強になるのは、力を込めて新製品を出品した人たちである

 昨日、鯖江市嚮陽会館で行われた「さばえものづくり博覧会2018」を見学した。鯖江市内で産業を営む企業が、工業製品・伝統的工芸品・農産物・飲食料品・観光物産品から、文化・情報・技術・サービス等を出展する。今年は84の事業者が出展し、ざっと見るだけなら10分もあれば可能である。
 つづいて今日は、地域の公民館で行われた文化祭を見学。

 先週は、22~24日とビックサイトのめがねIOFT展と生地・素材展、25日に福井産業会館でのテクノフェアの見学を行っている。
 これだけ続くと、さすがに展示会は食傷する。

さばえものづくり2018 H30.10.27 人形ダンス H30.10.27   宝永文化祭 H30.10.28

 いくら展示会へ行っても、なにか目的がなければ時間の無駄である。何もインプットされた気がしない。並べてある商品を観るだけなら、デパートや量販店などで、なにを買うかうろつきながら見ていた方がよほどおもしろい。

 むしろ展示会で一番勉強になるのは、力を込めて新製品を出品した人たちである。彼らは、出展作品を見に来る人だけでなく、他の無数の出展社とも交流できる。しかも出展する企業の製品は、ほとんど何らかの新製品、力作である。これらとコラボできれば、自社製品に新たな価値が生まれる。
 もちろん、補助金におんぶして、ただ漫然と出展した人は昼行燈と同じである。

川崎重工の可能性

 ネットで調べれば検索できることより、開発の背景や問題点などを知りたかった

 テクノフェアで行われた記念講演会を聞いた。川崎重工業㈱代表取締役の金花芳則氏の「川崎重工業が目指す未来、ものづくり企業の可能性」というタイトルである。
 この会社は、1878年に創業。事業領域は、航空機、産業プラント、船舶、鉄道車両など、幅広い。最近では、人共存・協調ロボットや医療用ロボット、水素エネルギーの開発などに取り組んでいる。
 今回はおもに、カワサキロボットと水素関連技術についての内容であった。

              川崎重工社長講演 H30.10.25

 1時間余りの講演の中では、とくに川崎重工業が先駆者であるロボットの開発状況について時間を割いていた。
 開発のポイントは2つある。労働人口減少と熟練技能継承である。

 まず労働人口減少に対応して、「人共存型duaroロボット」を開発した。人と同じように腕を2つ持ち、人と同じ空間で作業を行うロボットである。動作もゆっくりで、人が触れれば直ちにストップする。従来のロボットは、腕1本で高速動作を行い、危険なので動作中は人に接触しないように、柵などが設けられていた。
 しかしduaroロボットも、動作そのものは従来のロボットとそれほど違わない。

 そこで、熟練技能対応型「SUCCESSOR」を開発した。これは熟練者が遠隔操作でロボットアームをコントロールし、その微妙な感触をコントローラーに記憶させ、自己学習させる。AIとの融合で、作業上の微妙な感触を覚えさせ、熟練度を増していくものである。


 つぎに水素エネ技術は、オーストラリアに豊富にある褐炭から取り出し、日本に輸入するところから計画している。ただすべてのエネルギーには一長一短があり、ほんとに水素技術に将来性があるかどうかは、だれにもくわからない。
 ただ、褐炭から水素を取り出す場合にはCO2が発生し、その水素(H)を燃焼させたときも、空気中の酸素(O)を取り込んで水(H2O)になってしまう。水素エネルギーが主流になったら、いずれ大気中の酸素不足が深刻になるかもしれない。


 これらは技術的に興味ある内容で、私のような素人にはそれなり勉強になった。

 だがこんな仕様概要の説明など、ネットで調べればすぐ検索できる。むしろその方がわかりやすい。なにも大企業の社長様が、わざわざ講演で述べなくてもよかったのではないか。むしろ、その開発に至るまでの背景や技術的な問題点、苦労話のほうを聴きたかった。
 無料講演会では無理か。

テクノフェア

 人手不足をカバーするには、まだ革新が必要

 昨日、「北陸技術交流テクノフェア2018」を見学した。あらゆる分野の企業や学校、団体が出展する北陸最大?の総合技術展示会である。今年も、200近い企業や団体が出展している。

 午後一番に行われた川崎重工業社長の講演のあと、会場を巡った。
 いつもながら、ずらり並んだ展示ブースには、わけのわからない製品やITサービスが、これでもかと展示してある。内容を理解するには、担当者の突っ込んだ説明を聞かなければならない。短時間ですべてのブースを理解するのは不可能である。

  サクラ咲く H29.3.26   発明品 H30.10.25

 今年目に付いたのは、ロボットを中心とした制御機器であった。ロボットも、数十年前から、見た眼ではそれほど変わっていない。展示物を見た段階では、とても人間の細かい作業にとって代わるとは思えない。開発する人がいなくなり進歩が止まってしまったのか。人口減少、人手不足を解消するのに間に合うかどうか。一世を風靡したペッパー君ロボットも、かなり苦戦しているという。

 今回の展示会を観た限り、深刻な人手不足をカバーするには、まだまだ革新が必要だと思った。かえって小中学生の発明品の方が面白い。

ものづくりの優先順位

 なにひとつ気を抜くことができない真面目な経営者ほど、ノイローゼになる

 製造業では、古典的にQCDすなわち、品質(Q)、コスト(C)、納期(D)を重要視してきた。もちろん、この3つを外したものづくりはできない。だが、近年はこれに加えて、S・Lが重要視されるようになった。すなわち、安全(S)と法令順守(L)である。

 いまや「安全な製品を安全につくる」ことは、企業が存続できる大前提である。
 だが、これは簡単そうで難しい。生産設備やシステムが高度・複雑になっただけでなく、事故を見聞きした経験のあるベテラン社員がいなくなり、なにをしたらいいかわからない。さらに、異常なポリティカル・コレクトネス社会で、わずかの違法行為も見逃すまいと、飢えた市民たちに虎視眈々と狙われている。

            危険な稜線 H30.7.23

 もっとも、家族経営から小規模事業者、中小企業、中堅・大企業と移っていく間に、その重要性は変化する。
 規模が小さい間は、DQCSLであろう。年越しそばの出前が、正月にずれ込んだら目も当てられない。赤字の会社はコスト(C)優先になる。でなかったら、あっという間に潰れる。  
 ある程度の大きさになると、SLQDCになる。その場合、QDCが自然に身についている。

 もちろん、優先順をつけたからといって、ひとつとして疎かにできない。なにか綻びが出れば、ただちに屋台骨がぐらつく。
 したがって、企業経営は四六時中気を抜くことができない。真面目な経営者ほど、ノイローゼになる。

トヨタ方式の実践 トヨタのカタ③

 改善の内容をアドバイスするのでなく、現場の人々が自分たちで改善できるように

 前回の「トヨタのカタ②」の意図するところを、私の体験を踏まえて述べてみよう。
 私がトヨタ方式に興味を持ちはじめたのは、大手の眼鏡枠製造会社に勤務していた、30代のころである。ほとんどの国内眼鏡枠製造業は、多品種少量型であるにかかわらず、大量生産型で旧態依然のものづくりを踏襲していた。設備配置は、典型的な機種別配置で、トップは同じ型の機械が整然と並んでいる見栄えをなにより重視していた。

 私自身は開発部門にいたため、直接生産現場に係ることはなかった。それでも、生産の責任者が工場を「改善」するたび、設備が集められ作業導線が複雑になっていくのを、複雑な思いで眺めていた。新郷重夫氏、古畑友三氏、関根憲一氏などの著作とは、まるで反対のことをやっている。当時はなにかおかしいと思っても、現場経験が乏しいため、本だけの知識でベテラン社員を説得することはできなかった。中小企業診断士の資格を得たのはそのころである。
            未来へのトンネル H29.12.19
 自分でものづくりの本格実践が出来るようになったのは、30代後半、子会社の部品工場を任せられてからである。そこから独立までの3年あまり、工場責任者としてトヨタ方式をベースに工程改善に取り組むことができた。
 そこで行ったことを、以下簡単に示す。

 最初は、見える化である。
 それまで、20数台あった自動機械の運転は、いつどの機械が何を加工するのかよく分からないまま進めていた。セッティングも担当者任せで、生産管理も何もあったものではない。そこで、機械ごとに割り振った大きな日付管理版をつくり、製品別の生産指示書を貼り付けた。単純だがこれだけで、それまで担当者の頭の中にしかなかった生産計画が立てられるようになった。

 また、工具や治具、原材料、雑多な仕掛品の整理整頓、置き場所と表示を明確にした。最初の半年、ほとんどこれだけに費やした。おかげで、はじめて入ったものづくり現場も、次第に様変わりしていった。

 つぎに、多工程持ち作業の導入である。これは現場の女子社員には評判が悪かった。
 立ち作業で、いくつもの工程をかけもちするのは労働強化だといって、反発を食らった。説明してもなかなか分かってもらえない。機械をセッティングしても、いつの間にか元に戻ってしまう。当時女性社員の憧れだった私が苦労したのだから、並みの管理職には無理であろう。

 転機は、ある部品の納期が迫り、にっちもさっちも行かなくなった時である。思い切って10工程ほどある(半自動)加工機械を工程順に並べ、レイアウトを変えてみた。夕方から2時間ほどかけ、担当課長と2人で機械を移動した。翌日から立作業に理解を示す20代の男子社員をオペレーターとして、作業をやってもらった。
 なにが変わったか。
 まずそれまでは所在が明確でなかった仕掛品が工程順におかれ、探し回る手間が無くなった。もちろん工程間での数読みや持ち運びもない。切削加工で取り外した後でバリ取りし、そのまま次の加工機械にセットする。これで取り置きの手間が無くなる。すべて1個流しとまではいかなかったが、仕掛が少なくなりリードタイムも早くなった。異常の発見が早くて、手直しも激減する。いくつか簡単な機械をつくりながら改善を進め、1~2か月後にはこの部品加工の生産性は倍近くになった。

 残念ながらコストダウンが本社にバレたため、大幅値下げを要求されてしまった。
 この部品工場では、そのあといくつか自動機械を開発したが、ローコストでこれほど効果があがることはなかった。
 この経験をもとに、自らが部品工場を立ち上げたことは、以前このブログで書いた。自分の会社なら、成果がそのまま懐に入る。このとき年代に応じた仕事の姿勢があることに気が付いた。
                守り神
 50代から行ってきた今の仕事では、製造業の現場改善のアドバイスをすることもある。素直に従ってくれるところもあるが、大方はなにかと理屈をつけなかなかやらない。その場合、云いっ放しで終わる。私がトップでやったときでさえ苦労したのだから、いくらコンサルタントだろうが部外者の云うことを聞く方がおかしい(もちろん多くの工場の中には、参考にしたいところもあった)。

 ほんとは、改善の内容をアドバイスするのではなく、魚の釣り方を教える。つまり現場の人々が、自分の力で改善できるようでなければならないと思っていた。そもそも現場は常に変化する。臨機応変に対応できるのは現場だけである。コンサルタントが指摘したときの状況が続くことはない。

 そのことを理論的に(長々と)説明した著作が、「トヨタのカタ」(マイク・ローザ―)であった。

トヨタ方式の内容 トヨタのカタ②

 以下、「トヨタのカタ」に記述されたおもなポイントを列挙してみよう。

①トヨタの重要な側面は目に見えない(自然に身についているため、幹部でさえうまく説明できない)
②カンバン、セル生産、あんどんなど、具体的な生産手法がトヨタのパフォーマンスではない
③特別な努力をしたり、改善運動のような定期的改善やイノベーションだけに頼ると、組織の脆いシステムを覆い隠す
④トヨタのカタは、常にターゲット状態を設定し、継続的な改善を可能にするものである
⑤継続的改善のカタは、とくにプロセスのレベルで行われる。それも小さいほどいい。
⑤トヨタの基本思想は「顧客のためにいい製品をつくる方法を改善し、進化させることで会社として長期間生き残る」
⑥トヨタの生産ビジョンは「不良ゼロ・付加価値率100%、1個流し・順序一定、必要に応じて・社員の雇用保障」で、これを生産における「真北」と呼ぶ。
⑦作業標準は基準点を持つためで、それを使うのはおもにチームリーダーである。
⑧基本的な生産工程のターゲット状態は
 ・適性作業者で、計画サイクルタイムに対し安定した1個流れをつくる
 ・小さなロットサイズで平準化の製品ミックスを目指す
 ・カンバンを使って工程間を結合する
 ・さらなる改善 
⑨トヨタの改善活動の90%は、チームリーダーや監督スタッフ技術者で、業務の一環として行う。
⑩トヨタの実践的問題解決法のステップ
 1)問題を取り上げる
 2)状況把握(行ってみる)
 3)原因を調査・・・ここまでで80%以上の工数
 4)対策をつくり試験する
 5)フォローアップ
  このうち、2)3)の段階で大半を費やす。
            異次元の物体
⑪改善できる人をコーチングによって育てる。答えを教えてはならない。
⑫メンターと呼ばれるコーチは、つぎの段階で何をするか(現場へ行ってみよう)を知っていなければならない
⑬トヨタでは対策を講じることより、さらに改善ができるように、作業システムの理解を深めることを重視する。問題解決能力の向上が目的
⑭時間がかかるポカ除け対策より、標準作業を変えることでもいい(改善はすばやく)
⑮コーチングサイクルを構成する5つの質問
 1)ターゲット状態は何か
 2)現在の状況は何か
 3)障害は何か。そのうちどれに取り組んでいるのか
 4)次のステップは何か(すばやく進むことが最重要)
 5)このステップで何を学んだのか
⑯できるだけこまかいPDCA
⑰メーカーの生産ビジョンは「可能なかぎり低コストでの1個流し生産」が基本
⑱部品加工→組立においては、ペースメーカーである下流の組立ループから改善を始める
⑲工程分析の例
 1)工程ごとのブロック図を作成
 2)各ブロックごとのサイクルタイムを測る(20回)
 3)バラつきを無くし、ネック工程を改善する


 これだけ見ても、なにがなんだかよくわからないと思う。ここまで書いて、説明の難しさを実感した。トヨタの改善システムは、簡単に説明できないし、それ以上に実行するのは難しい。
 次回はもっと噛み砕いて、私自身のトヨタ方式との関わり・体験を踏まえて述べてみたい。

トヨタ方式を書いた本 トヨタのカタ①

 トヨタの優位性は、改善と適応のための組織的ルーティンである

 久しぶりに、2冊ものづくりの本に目を通した。いずれも、トヨタ方式をベースとした生産性向上のための書籍である。ひとつは、日本のものづくりの権威である藤本隆宏氏(東大)が監修した「ものづくり改善入門」。もう一冊は、マイク・ローザ―氏(リーン生産コンサルタント)の「トヨタのカタ」である。

 前者は、昨年から福井でも実施されている、「ものづくりインストラクター養成講座」のテキストでもあり、トヨタ方式をベースとしたオーソドックスな教科書である。とくに新しいことが書いてあるわけではない。(実際の現場に適用できるかどうかは別として)工程分析、コスト管理、品質管理など、基本的な知識の習得には役に立つ。ものづくりを始める人にとってはもちろん、長年ものづくりに携わってきた人にとっても、基本にもどる意味で、近くに置いておきたい本である。
            勉学に励む
 後者も、トヨタ方式をベースとしたものづくりの考え方を示す本である。トヨタの経営手法を、これまでのどの研究より、深く掘り下げていると自称している。過去20年以上、多くの人がトヨタの優れた経営手法としくみを研究し、書籍として示してきた。だが、ほとんどうまくいっていない。トヨタのやり方が、根本のところで理解できていないからである。豊田の幹部でさえうまく説明できないという。この本ではその根本を抉っていく。
 
 一言で言えば、トヨタの優位性は、定量的・財務的目標管理ではなく、改善と適応のための組織的ルーティンだそうだ。なんだかわけが分からないが、400ぺージのこの本を熟読すれば、少しは理解できるかもしれない。
 次回②では、その内容をまとめてみよう。